シリーズ 接待② なぜ日本人は接待が下手なのか 

「シリーズ 接待①」で、日本の社会人の接待下手についての事例をご紹介して、それが日本経済に与えた影響についてお話ししました。経済が何かの原因でデフレ化することはあるでしょう。しかしその対策に具体的な効果が無い為、未曽有の長期化が続いています。その為に、少子高齢化社会の先進国として今から20年ほど前には海外でも“日本はその危機をいかに乗り越えるか”と言う論調が多かったのですが、それが今では“日本は如何なる形で滅びて行くのか”というものに変わっています。

それでもまだほとんどの日本人は実感を持てずに“そのうち誰かが良くしてくれるだろう”と高をくくっていますが、これも実は日本人の接待下手と無関係ではありません。なぜなら両者に共通するのは“経験不足による予測能力の枯渇”であるからです。

災害・地震対策、外交、企業経営…すべてに共通する“予測能力”の枯渇

先の東北地震ではそれまでに同様の津波の記録が残されていたにも関わらず、無視して街づくりがされました。熊本地震で観測された長周期パルスが東京に起これば、高層ビルが一瞬で崩壊する可能性が高いことも知られました。その他にも、今の世の中“こうすれば、こうなる”と言う予測ができていない例があまりに多過ぎます。それは、現代の社会人が社会経験や生活経験に乏しい為に、本来人間が持っている“予測能力”が枯渇しているために起こる現象です。


人と人の関係も同じです。生活の経験を積み重ねると自然と物事に関する“常識感”が養われて、実感が伴ってきます。そうなると人がこうすると、このように感じるのだとか、こうしてあげると、このような気持ちになるのだという予測ができるようになります。しかもその実感に現実感が伴えば、その事に関する感謝の気持ちも生まれて、自分は多くの人に助けられているのだと言うことにも気づく事になるはずですが、その経験がなければ予測ができなくなり、その能力自体が枯渇しますから、空気が読めなかったり、人との関わりに困るようになるのは不思議ではありません。

それは戦後の勘違いから始まった

日本は元々、血縁社会から地縁社会、そして職縁社会に繋がった社会(堺屋太一氏著 世は好縁社会)でしたから、小中規模な村社会で発展してきました。そこでは異文化との交流も乏しかったので、あまり感覚の違いを気にする必要はありませんでした。しかし戦後の核家族化は、さらに各家庭ごとの価値観をも可能にしてしまいました。これは要は自分勝手を誰も修正しないことで、自然と父親が価値観の決定者となる訳です。この価値観下では、一方的な父親の身勝手を容認するものでした。妻は夫に可能な限りの“お世話”をすることが正義となりました。家の事は掃除、洗濯、アイロンがけから食事の準備から片づけ、近所付き合いから子供の躾、はたまた実家との調整などありとあらゆることが妻の守備範囲として固定化されました。夫は“俺は会社で仕事”と言えばすべての家庭の義務から解放されるのが普通ですから、関係がなくても“仕事”を口実にすることが恒常化してきました。

そんな中から経験や感謝が生まれるわけがありません。更には子供の世代です。まだ娘は花嫁修業の名目で家事の手伝いをしていましたから、経験や感謝を実感しますが、息子は父の背を見て育ちますから、子供のうちから無責任体質が骨の髄までしみ込んでいます。職場ではそんな環境で育った先輩諸氏からも同じ常識感覚で指導されるのですから、それが全てである訳で、そんな世代が人間に対する予測能力など有る訳がないのです。

正しい接待はやり方を変えれば強力な武器となると知るべし

本当の接待とは、相手を思い図ることから始まります。どうすれば心地よい時間を過ごしてもらえるか、その上で接待する側の存在価値をさりげなく感じ取って頂き、信頼関係を強固にするのが基本的な目的です。
その為には人の性を知り、心を予測して、それを上回る対応をすることが求められます。そんな複雑で難しい事は予測能力が枯渇した人間には出来るはずもありません。
その上で、先に述べた世間の常識も反対の効果となります。“日本の常識は世界の非常識”とは以前はよく言われたものです。さらには会社の常識にさえ従っていれば、安定した生活ができるという異常な環境に異常に適合したこともその“敗因”となったと言えるでしょう。“予測能力の枯渇”・“世間の常識感”・“日本の会社文化への適合”。これらの条件が揃えば、人の心を忖度する能力のない人間になるのは当然と言えば当然のことで、畢竟、接待は“自分の為”と考え、とにかく高い店で御馳走して、盛り上げていればよいと言う考えから抜け出す事ができなかったといえます。

現代社会人に不可欠な技術化された高度な接待文化

そう考えると、もしこれらと全く反対の価値観を持った“正しい接待”が可能であれば、それはどれだけ大きな力になるかは容易に理解できるかと思います。事実、規模の大小に関係なく、細やかでも相手の機微や哀歓に触れるような接待をして、信頼関係を強固にしている企業はまだまだあります。
以前の例ですが、焼き肉が好きで有名な方の接待のご依頼に、あっさりとした和食屋で御茶漬けで接待したことがありました。その方のスケジュールが3日の出張の最後の日に当たることが分かったので、それまで焼き肉漬けされているだろうから、あっさりした和食で接待することにしましたが、それでもメニューに薬膳の材料を取り入れ、その効用をご依頼の社長に御説明してもらうことで信頼を築くことに効果を上げました。元々高い技術があったのでしょうが、両者の信頼関係も無関係ではなかったはずです。

またある例では、結婚に反対される婚約者のご両親との顔合わせのお食事会をセッティングしたこともあります。具体的な方法は差し障りがあるので避けますが、事前に充分に調査をしたり、多少仕込みを入れたりしながら、ご依頼者の真摯な心を訴えるやり方をとりました。またお店選びにも、充分に時間をかけましたし、その場に同伴して、ご依頼者の方の素の姿を“効果的な方法”でお見せもしました。お二人のご結婚を認めて頂いたと連絡を受けた時はわがことのような感動もありました。

レライアンスの「ビジネス・パーサー(接待屋)」にご相談下さい

“接待”は決して飲み食いして、盛り上げるだけの宴会ではありませんし、その根底にある精神も、卑屈で従属的な行為でもありません。正しく使えば強力な武器になることは述べましたが、それ以外にもどうしても個人的な人間の深さや教養も必要になってきます。経営者だけでなく、現代を生きる人には“接待できる能力”を持って頂く事で、その可能性を活かして頂きたいと思います。

レライアンスには〖ビジネス・パーサー〗と言う業務があります。しかしこれは“正式名称”でありますが当社の造語でもあります。現場では「接待屋」と呼んでいるこの業務は、ご依頼者様と同行し、適材適所の場所選びを行い、両社の関係がこれからもスムースに流れるようにセッティングする仕事です。
もちろん、企業様だけでなく、個人様からのご依頼もお請けしております。詳細はレライアンスのホームページの専用メールなどからご遠慮なくお問い合わせ下さい。

 

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