COVID-19(新型コロナウイルス)中国でなにが起きたか、日本はどう対応したか。

COVID-19 中国でなにがあったのか

2019年12月 武漢から帰国した日本企業の現地法人の社員から「変な風邪が流行っている」という情報が既にもたらされていたそうです。その風邪がCOVID-19であったかは不明ですが、時期から見てそう断定できるかと思われます。

2019年12月下旬 中央にも武漢からのただならない情報がもたらされてきました。そのため、上海市の公共衛生臨床センターが科研プロジェクトを立ち上げました。通常のサンプル収集であるという前提でしたが、対象地域は武漢市中心医院と武漢市疾病制御センターからの発熱患者のサンプルに特定されていました。

12月30日 李文亮医師がチャットで初めて感染拡大の懸念を表明しました。しかし、当局は「デマの拡散」を理由に李氏を逮捕、処分しました。この時点では中央もまだウィルスの狂暴性を見くびっていたようで、最初に手をつけたのは、いつものように情報の隠蔽でした。この時点で公表し、WHOも動いていたらと思うと忸怩たる思いがあります。

年末から年明けにかけて 当然、武漢のコロナウイルス感染は爆発的に増え、患者数は週ごとに考えられないほどのペースで拡大しました。インペリアル・カレッジ・ロンドンの研究者は、1月12日の時点で既に1723人が感染していたと推測しています。しかし、この頃からSNSなどでは既に現地の惨状が漏れ聞こえてきていました。

インペリアル・カレッジ・ロンドン

インペリアル・カレッジ・ロンドン( Imperial College London, ICL)は、1907年にロンドンに設置された理工系の名門大学で、ケンブリッジ大学やオックスフォード大学、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)と並ぶ英国での難関大学。多くのノーベル賞やフィールズ賞の研究者を輩出している。ここは留学生が多いのも特徴で全体の4割強は外国の留学生で、1割強中国籍でもある。武漢ウィルスに関しては、その初期から適格な情報収集がなされていて、1月12日時点の感染者数の推測は武漢地域限定ながらかなり信用ができる

2020年1月5日に上海市の公共衛生臨床センターでは、この病原菌が未だかつて歴史上見たことのない「新型コロナウイルス」であることを突き止め、北京に報告しました。これに対して武漢を管轄する湖北省政府は事態を頑なに認めようとはしませんでした。

2020年1月19日 湖北省政府からの報告に反して、中国国内で感染が他の地域にも爆発的な広がりをみせていました。中央政府の指示により、この段階で中国工程院が武漢に派遣されました。工程院というのは中国政府のシンクタンクの1つで、責任者は、院士(博士の上のレベル)鐘南山氏が率いていました。
しかし、この「国家ハイレベル専門家グループ」は、現地に到着すると、一目でその惨状の凄まじさを見て取り、その日のうちに北京に引き返しました。事態は想像を絶するものでした。

1月20日 「国家ハイレベル専門家グループ」の報告を受けて、習近平が急遽「重要指示」を発布し、それ以降、事態は表面化し、中国国内は大混乱に陥ります。
翌日になって、武漢市東西湖区市場監督管理局が「市場経営者に告ぐ」という通知を出しました。中国では各地域が個別に公の発表をすることは許されていないという建前ですが、この日、その武漢市では湖北省春節祝賀演芸会が開かれています。ここには危機感のない湖北省政府や武漢市政府の上層部が全員参加したと言うことで、出演者の中には新型コロナウイルス肺炎の疑いがある症状を来たしている者が多く見られたという証言もあります。

1月28日 中国の習近平国家主席は、世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長を北京に呼び出し会談。新型コロナウイルスによる肺炎の拡大に対して、WHOとの協力姿勢を示しました。習氏は中国国内の実態を詳らかに説明して、WHOに採るべき行動を採るよう進言したと信じたいところですが、この後、テドロスの状況をみると、おそらくはWHOのテドロス事務局長への利益供与と恫喝であったと推測できます。

一部ではこの時、1~2カ月で、情報を完全に封じ込め、都合のよい状態に持ってゆくので、WHOではそれまでパンデミック宣言は出さず、原因はヨーロッパにあるという筋書きを因襲するようにと指示をして、感染者をヨーロッパに送り込んだなどという“説”があります。私は陰謀説を信じるほうではありませんが、妙な説得力があります。

COVID-19対策 日本はどう取り組んだのか

メディアに登場するいわゆるコメンテーターは、「安倍内閣は遅きに失した」ということをよく言っています。
果たしてそうでしょうか。司法や立法、行政に関わったことがある人であれば、すぐ分かるのですが、日本は完全な法治国家ですので、例え総理とは言え、勝手に“超法規措置”などとれません。例えそれが急を要する事態でも、法的アプローチをとって対処する必要があるのです。それを知ってか知らずか日本のメディアは、かの朝日新聞社の椿事件のように、安倍首相憎しで凝り固まっていますから、どうせ、一般国民は分からないだろうといい加減な情報を瀰漫させています。「もっと~だったら」とか「あの時点で~していたら」のような論調が聞かれますが、政治や行政の仕組み、事態の流れを知っていれば、決して批判的な結論にはならないと思います。それを頭に於いて政府対応を振り返ってみます。

法治国家での法的手続きの意味について

※前提として日本は完全な法治国家ですので、感染症に対して何らかの対策を採るためには、それを法律上に位置づけられる“指定感染症”に指定しなければなりません。政府がなんらかの処置にでると、市民生活や企業業績に多大な影響がでます。それを法律で定めることなく、その時点の内閣の任意で可能となれば、それは独裁国家となります。本来は憲法で、緊急の場合は政府が強制的な権限を行使することがあると規定されているものですが、日本国憲法にはそれがありませんので、そのためにも憲法の改正は不可避でしょう。憲法改正の必要性が問われる一因でもあります。

1月中旬 中国でウィルス性の風邪が流行っている旨の情報はあるにはあったが、海外ニュースの1つに過ぎず、また中国のマイナス面は報道しない日本のメディアの習性もあって、過小に報道されていました。ただネットの時代、ただならぬ状況という情報もあり、マスク不足が言われ始めたのもこの時期です。

1月20日 この週になって武漢市が大変な状況であるという報道が流れ始めました。そこで厚生労働省に専門家チームができますが、この時点でも日本の専門家は、たいした感染症ではないと認識していたと思われます。事実、この時点では、私のメモをみても、「日本政府の対応」「指定感染症」「入国制限」に言及した専門家はほぼ皆無の状態でした。

1月20日の週 新型コロナウィルス(武漢ウィルス)は、指定感染症に指定されおらず、政府内部からも手を打つべきとの声もありました。首相からの再三の問い合わせについても、この週では厚生労働省は中国やWHOの情報を鵜呑みにしていて、一向に動く気配はありませんでした。

1月28日 一向に動かない厚生労働省と専門家会議に対して、安倍内閣は法律上の建前としては専門家会議の意見を聞いてからであるものを、飛ばして政治判断(内閣の全責任)で指定感染症に指定しました。そんなときでも手続きは踏まなければならず持ち回り決議(形式的に書面を回覧するやり方)で進めました。

2月1日 中国武漢からの入国制限が始まり、感染症法や検疫法の適用も可能となりました。これらは4日前に安倍首相が政治判断によって、指定感染症指定をおこなったから可能であったことで、この時点では、専門家たちは、ほとんど危機意識もなく、やれインバウンドに影響するとか、経済活動に影響が出ると騒いでいました。

2月2日 プリンセスクルーズの記事がでるが、香港の感染者がクルーズ船で来日したというもので、我々が連日、このニュースを見るようになったのは2月の中旬になります。厚生労働省や専門家会議というのがいかに能天気だったという悔いはありますが、日本政府が法制度の中で、また国の機能を活用して、いかに適格に対応したかが分かる事例です。

因みに、その後、制定された「新型インフルエンザ等対策特別措置法」は2013年(平成25年)、今の野党が政権下で制定した「新型コロナウィルス対策特別措置法」と比べてウィルス名だけを差し替えたものです。本来ならば右から左で制定すべきですが、これにしても国会で議論(?)していましたね。 

COVID-19の今後はどうなるか 

責任逃れしか頭にない中国政府の愚策

COVID-19(武漢コロナウィルス)のパンデミックは世界中に拡大していることは、もはや疑うすべもありません。しかし今回の新型(突然変異)ウィルスについては、まだ何も分かっていませんし、なぜいつも中国からパンデミックが広がるのかについても、今後真剣な検証が必要でしょう。わざわざ”真剣”と言ったのは、今回のドタバタで、WHOの在り方、おそらくは世界の人々に対する保健衛生の確保よりも、WHOの一部の人間が中国との利害関係を優先してしまったのではないかという疑惑は抜本的なこの組織の存在と、新たな組織(仕組み)創りを考えなければならないという帰結に繋がったと認識されるからです。

中国はかつて事故を起こした鉄道車両を埋めてしまったように、今回も武漢からパンデミックが広まった事実を埋めてしまおうと必死です。武漢から発生したウィルスである事実を隠したい余りに、自国の国民の生命をなおざりにしたり、ウィルスに関する多くの情報を隠蔽するだけでなく、そんな中国の姿勢に対する批判がでたら、”新型コロナウィルスは米軍が持ち込んだ”とか”言われない(なぜ?)中傷をすると良からぬことになる”と言うようなプロパガンダを繰り返すのは、まだこの国が20世紀中盤に生きているからでしょうか。しかし多くの専門家が指摘するように、どれほど中国が終息宣言を出そうと、今回のCOVID-19は、武漢から世界に瀰漫させた病原菌であり、その対応(人権問題も含めて)中国という国(地域?)の在り方と、それに依存する先進国の拝金主義の在り方に一石を投じました。

BC19とAC19では何が変わるべきか

その意味では、「Before COVID-19」と「After COVID-19」とは違ったものに再構築する必要があるでしょうし、おそらく経済だけでなく、政治や国際関係の味方、特に中国と言う国について、世界は見直すことになるでしょう。これまでパンデミックは全て中国発ということは、もう国際社会も看過できなくなり、中国は情報の公開方法などで、これまでのような自分勝手は通らなくなるでしょう。

また日本で言えば、財界の在り方にも不信が募りました。例えば今回、日本の大手企業でもサプライチェーンマネジメントがいかに成されていなかったか、単なる中国依存に過ぎない姿を浮き彫りにしました。アメリカのメディアが「泥棒を銀行の頭取に選ぶようなものだ」と言いましたが、中国に対して人権問題を突きつけ、拝金主義をとらない大統領がいる間に、21世紀の世界の在り方をもう一度再構築してゆくことが、COVID-19が終息したあとにおこなうべき最優先事項になるでしょう。

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