地方のインバウンド政策①  地方の民間発想で行うのが上策

2500万人を越えるインバウンド

2011年、東北の震災で外国人旅行客が3割近く落ち込んだ時、政府は2016年に1800万人、2020年までに2500万人に増やすとうい計画を発表しました。これに対して、民間系シンクタンクでは東京電力福島第一原子力発電所のメルトダウンの影響も不透明でもあったので、さすがに厳しい目標と評価しましたが、少しでも旅行客数の挽回の為の政策を提案ということで、社会資本の充実(交通網の整備とか表示・標識・HPの多国言語化など)を中心にしたものを提案しました。“おもてなし”をその概念に加えたのは、もっと後で、国として外国人入国者(旅行者ではなく)を引き上げる対策としては多少の違和感を覚えたものです。
その後、まさに劇的なV字回復を果たし、今年は2500万人の大台の達成も不可能ではなくなってきて、インバウンド対策も第二幕に移っていますが、その中心的なテーマが“地方のインバウンド政策”ではないでしょうか。しかしこれが膨大な失敗事例を生んでいることも見逃してはいけないことです。原因はインバウンドを取り巻く環境にあります。基本的に日本のインバウンド政策は官僚主導で、予算化した費用を地方が“消化”する形をとってきました。都市部では、例えば東京などでは社会資本に予算を投入しても来日した旅行者は東京を目的地にするか、行動のキーステーションにせざるを得ないので、何をしても“効果が確認できた”と言えます。しかしわざわざ足を運んでもらう地方ではそうはいかないのにも関わらず、国からの予算を都市部での経験しかないコンサルティングなどに仕事を依頼すると結果が伴わず、畢竟“予算消化”が目的化するという悪循環となります。

地方のインバウンド政策のアプローチ

私は“地方のインバウンド政策”は、“100かゼロか”的なものになる現実を多く見てきましたが、ゼロになるケースはこうした親方日の丸的な地域に顕著だと言えます。では100となる地域とは何が違うかと言えば、それは“具体的なビジョン”の有無と“現実可能なアプローチ”、“地域住民の理解”などに集約できると言えるでしょう。例えば、京都ではどうだとか、東京ではこんな成功例があるなどという横睨みの発送でなく、訪問客数を年単位に数値化した上で、具体的な収益をプラン化することから入る必要があります。それはそうで、例えば福岡市が京都市と同じプランをしても効果は望めませんが、それは観光先進地域は戦後、半世紀以上、着々と努力と予算投入を繰り返してきたからにほかなりません。またいくら博多区内に古い町並みが残っているからと言って人力車を導入しても物真似としか映らないでしょう。もっとも大事なのは住民の理解を得れない事かも知れません。例えば、家に知人を招くにしても、家族には事前に根回しをしておかないと、招かれたほうも決して居心地が良いものにはなり難いのと同じです。
では具体的に、地方のインバウンドにはどのような政策がマッチするのかを次にお話し致します。
(②に続きます)

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