地方のインバウンド政策③  お土産について考える

観光地のインバウンド政策では、様々な批判があっても中国からの観光客を喜ぶのは、彼らが大量にお土産を買ってくれるからだと言われます。爆買いも今では下火となりましたが、欧米からの旅行客が買い求めるお土産は比較すると極めて少量となりますから、多少のことには目を瞑ってもありがたいというのが現状でしょうか。しかし、“そもそも論”から言うと、中国の観光客が買うのはgift(他人へのお土産)とsouvenier(自分へのお土産)で欧米人のそれはsouvenierが中心ですから、当たり前と言えば当たり前かも知れません。
日本はお土産文化ですから、その辺りは混在して発想してしまうのですが、ちょっと考えてみたいと思います。よく地方の観光相談で受けるのは、新しいお土産を“開発”したいという場合です。どうしてもその土地の特産物を活用しなければお土産にならないと考えがちですが、実はお土産として販売されているものの極めて多くは、その土地とは関係のないものが多いのも事実です。○○万頭だとか○○名物○○というもののほとんどはそれを大量に生産している地方企業が絶対の強さをもっていますし、小物などは中国産です。「紀州の梅干しは台湾製に限る。京都の扇子は中国製」などの例は普通にあります。つまり「そこで買う」ことがお土産で、「そこの産物を買う」のとは別に発想することが大切です。でないと、観光客に響かないことになります。観光客へのアプローチがあくまで主役は観光客なのですから、お土産開発で大事なのは、その地とのイメージ付けになるのでしょう。


いまひとつの視点としては、観光もお土産もインバウンド視点を少し変えて行く必要があるという点です。日本はお土産(gift)文化であると述べましたが、これがあまりに常識化すると、インバウンドも当然そうあると考える事です。日本ではその地独特の食文化などがありますから、特性を出すことができます。また「講」文化の影響もあるのか、旅に出るとご近所にお土産を買うのが使命となります。しかし例えば世界有数の観光大国のフランスやイタリア、アメリカではそれほどお土産に力を入れていないように映るのは、観光業が栄えるほど、モノからコトへのシフトが起きるからです。そう考えると、今のようになんでもかんでもインバウンド対策に注力するのが手柄みたいな状態ではなく、従来の日本人観光客を大切にする姿勢でもあるでしょう。実際都市部の百貨店では、日本人顧客の支持が低下していると言われますし、そうでなくてもあるアンケートでは「利用はするが気持ちが良いものでない」という結果もあります。
先にも述べましたが、地域の日本の顧客の感情を無視しては、インバウンド対策もうまく行きません。外国人観光客が2500万人を越える今、新しい視点を持ったインバウンドに変わって行く必要があるでしょう。

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