AIに対する期待と実態
世は開けても暮れてもIoTとかAIの大合唱です。先日東京ビッグサイトで開催された第一回AI・人工知能EXPOでも、その関心の高さが証明されました。しかし皮肉なことに会場等で話を聞いていると”AIって言ってもこの程度?”というような声が多く聞かれたのも事実です。供給側が常に目新しいものを提供することにかけては日本は大変進んでいるのですが、果たして目新しいものを追求する前に、今与えられているものを活用することで、もっと利用価値を広げることはできないだろうか。オーストラリアの経済学者シュンペーターはこれを”イノベーション”と呼びました。私達が”技術革新”と単一的な理解をしているこの言葉には、元々そのような意味があったのですね。
実は以前、こんな例がありました。それは家庭用の電化製品を製造販売している中小企業で、性能は悪くないのですが、取り立てて高性能でもなく、無名な為価格は安くせざるを得ないのが実情でした。営業やネットなどでの販売で多少直接購入はありましたが、大手家電のパーツのOEMなどで繋いでいるという典型的な中小企業でした。テレビなどでは、オリジナル製品を開発して、劇的にV字回復を果たす話が出てきますが、これは希な例ですが、この会社の経営者はなんとかして、オリジナル製品の販売を増やしたいと考えていたようで、ご相談を受けました。
ところが、堅実な仕事はする会社ですが、特別な技術がある訳でもないし、製品開発や販売の為の予算もない状態でしたので、同社にある”普通の資料”を基に対策を練りました。同社にもどこにでもあるような”購入者リスト”があり、定期的に商品のDMを送付していたのですが、それもあまりバリエーションのないカタログの域をでないもので、わざわざ「今回、○○を発売します」という告知で、よく言う”右から左のゴミ箱行き”の典型的なものでした。そこでDMの送り方を変えてもらい、購入製品の保証期間の終了前1か月になったら、製品の具合を尋ね、保証期間が終わるので、わずかな不調でもお知らせくださいという案内を主にしたものを送付しました。
ITの効果を客観的に判断する
結果として、保証期間前でも製品の不具合の連絡はあまりないのはよかったのですが、それほど劇的な影響もなかったので、私達も気にしていました。しかし、最初から経営者の方は明らかに雰囲気が違ってきていると好印象を口にされおり、果たして徐々に問い合わせや製品の売上げ等が向上してきました。現在でも浅いお皿のような回復基調かも知れませんが、同社の規模、内容からみれば、大きな進歩だと感謝されました。今お客様から頂いたお手紙を事務所に掲げているそうですが、文面は「御丁寧なお気遣いがよかった。今買うものはないですが、次に購入する場合は御社のものを」となっていて、従業員も大変喜んでいるのだそうです。
業績向上の為に、大手のポータルサイトなどが有効だと言われますが、私達の分析によるとこれによって業績が本当に向上できたのはごく僅かであると言えます。また業績向上の定義が大変甘いものであることも少なくなく、この数値はもっと下がる気配があります。中小小売店がお客様から支持を得る為には、お客様との接点を生み出す工夫が重要で、決してその部分は手を抜いてはいけないのではないのだと思います。