心がリラックスできるフランス料理店 帝国ホテル東京の レ・セゾン

レ・セゾンの懐の深さ

フランス料理というと“おしゃれ”だとか“ちょっと堅苦しい”イメージがありますが、実際は楽しめて、且つリラックスできるものです。私は若い頃、一時フランス料理を極めたいと考えたことがあり、基本的な料理法を学んだり、素材を覚えたり、ワインとの相性を学んだことがありました。その頃は少し堅苦しくても仕方がないと思っていましたが、それはその頃の日本のフランス料理店の有名店がそんなコンセプトだったからのような気がします。ラ・トゥールダルジャンやラン・ブロアジー、ルカキャルトンなどで食事をしたとき、とてもリラックスできると感じたのはその証左かも知れません。

そんな中で、とても正統派でありながら、リラックスして楽しめたのが、帝国ホテル東京のメインダイニングのレ・セゾンでした。ここはホテルに到着した時から違っていました。フロアースタッフに声をかけると無線でしょうか、連絡をとり、レ・セゾンの予約状況を確認してくれた手際の良さはさすがと感じさせました。

 

料理もフランスのシャンパーニュのレストラン“レ クレイエール”のシェフをしていたという、ティエリー・ヴォワザン氏の独創的なもので、とても良かったのですが、正直日本のフランス料理店には同様のレベルのシェフは他にもいたと思います。ここの料理が他と比べてリラックスでき、とてもシェフの腕を引き立てていたのは、このレストランのスタッフのレベルが秀逸であったからかも知れません。私のテーブルについたのは20歳代のまだまだ若さを感じさせる人でしたが、料理一品一品をしっかり理解して、とても丁寧に説明してくれる真摯な姿勢が光りました。

料理の作り方の説明をするかと思えば、さりげなく味の印象を聞き、次のメニューにはその点をカバーしたものを提供してくれる念の入れようでしたし、彼一人だけでなく、彼が時々飛ばす視線の先にはエリアを担当しているのか、少しベテラン風のスタッフが店全体に気を巡らしていて、とても楽しめました。

その後、何度かランチや宿泊時の朝食も含めて試しましたが、期待は裏切られることはありませんでした。料理も仕事も一人では完成できません。お互いが目的に向かって協力し合うことが、仕事全体のクオリティを高めることになります。それは本当の意味での顧客の満足度と好印象を高めることにもなる。それを教えて貰ったダイニングが、レ・セゾンでした。

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