前回「奨学金制度 日本学生支援機構の闇が日本を滅ぼす」で、学生のほぼ半数が利用している奨学金制度が、名ばかりのもので実際はかなり悪質なルールを強制した単なる“学生ローン”であることを述べました。これについては、様々な御意見を頂きましたが、ブログの表現が穏やかだったのか、あまり危機感が伝わっていないような印象でした。そこで今回は少し強い表現をしましたが、現実に独立行政法人に追いやられた奨学金返済者の苦しみの実態はこの比ではありません。今回はできるだけ現実の問題について、お話ししようと思います。
今 日本で起きている“恐ろしい”借金地獄
かつて街金だとかサラ金だとか言われていた消費者金融などにしても、法に抵触する部分があると意識していましたが、日本学生支援機構などは、好き勝手なルールを作っているだけにたちが悪いとも言えるかも知れません。
例えば返しても返しても元本が減らないため、40歳、50歳を過ぎても借金地獄から抜け出せないとか、返済の為にブラック企業で働かざるを得なくなって過労死などと言う例は普通の光景です。今は延滞金システムが“完備”していますので、追徴金で苦しむなども、もはや“常識”の範疇です。返還猶予制度というのもありますが充分知らされていませんし、そもそもこの制度には決定的な貸し手側に有利なからくりがあったりします。しかも実際には大変この制度は利用し難いような規定があります。もうこうなると、かつての悪質サラ金も顔負けの制度だと言わざるを得ません。
最初から仕組まれていた?奨学金制度のからくり
このようなシステムが堂々とまかり通っていること、政治家なども、これからの若い人たちが奨学金制度と言う名の金融ローンで地獄の苦しみを味わっていることは百も承知の上で放置されていることには驚きを隠せません。何故でしょう。世間では“少子化対策”と称して多額の予算が浪費されているのに、日本の未来を築いてくれる若者の半数近くが苦しんでいる現状を見捨てているのは。
私はこれはどうやら所謂官僚達が学生達を対象に仕組んだ“罠”であったように思えます。大体まだ私が若い頃でしたが、まだ日本学生支援機構の前身の日本育英会だったころの1980年半ば頃に、日本育英会法が“全面的に”改正(改悪?)されて、それまで無利子のみであった奨学金に有利子枠が創設されました。当時、大学のゼミでこの問題を取り上げたので覚えているのですが、この時には付帯決議が添えられていて、そこには「育英奨学事業はあくまで無利子貸与制度を根幹とすること」が前提とされていて「有利子制度は、その補完装置であり、財政が好転した時には廃止を検討する」と書かれていました。その文言にはかなり奇異な印象を持ったものです。(勿論、この付帯決議が実行されることはありませんでした)
国民に牙を剥いた育英制度の金融制度化
このあと、政府、官僚がしたこと。それは大学の学費の引き上げでした。そして間をおいて日本育英会では有利子貸与制度をつくりました。そして無利子枠はそのままにして、有利子枠をその後の10年で10倍に拡大させました。大体この時の制度も財政投融資とこの機関債の資金で運用するというやり方で、大いに疑問に思ったものです。
2004年でしたか、日本育英会は独立行政法人日本学生支援機構に引き継がれることになり、ここで奨学金は“金融事業”と定義されることになり、その数年後、民間資金も導入されました。奨学金制度という、耳障りの良い制度が、サラ金と変わらない金融制度化して、それを信用し、利用する大学生や国民に対して明確に牙を剥いた瞬間でした。
奨学金制度が“歯止めが効かなくなった官僚主導の悪質金融業者”と言われる訳
その後、この独立行政法人が一方的に利益を上げられるように、次々に…、もう歯止めが効かない状態で法改正が続きました。国民が気づき難い状況を作り上げ、どんどん未来ある学生達を、その親を借金地獄に陥れたと言っても大同小異だと言えるかも知れません。この四半世紀、日本ではそれまでの日本式経営は姿を消し、退職金も、雇用体制も崩壊しました。銀行は金利を払わなくなり、年金制度も事実上崩壊しています。そんなことは百も承知の官僚が主導している独立行政法人が、奨学金に焦点を絞り、少子化を悪用して暴利を貪っている…。そう言われて、その事を否定することは、かなり困難なことだと思われます。
“それなら最初から金を借りるな”、“わざわざ大学に行かなくてもよい”と言う出どころ不明の“意見”
こんな時必ずどこかから、このような“意見”が流布されます。これが妄言であることは「奨学金制度 日本学生支援機構の闇が日本を滅ぼす」でも述べました。わざわざ大学などに行かなくても…というのも変な話で、今の日本では意味不明の学歴差別がまかり通っています。大卒と高卒では全く違った雇用条件となっているのですから、この意見がどれほど無意味なものかは分かるでしょう。問題はこうした妄言がどこから“手配”されたのかと言う事です。かつてNHKがこの奨学金地獄を番組で採り上げた時には、日本学生支援機構から恫喝ともとれるような抗議があり、それからこれをTVやメディアで扱われる頻度は一挙に激減しました。
少子化対策を考慮しても、少しでも早く大学の授業料の無料化は必須の状態。政治家は行動せよ。
奨学金制度の改善案としては、例えば現在の奨学金返済猶予5年の上限を撤廃して年収基準に代えたり、有利子制度を廃止して、少子高齢化や若者の支援政策をとるなどもあるでしょう。給付型の奨学金を導入すると言う意見もあります。しかし私はこんな意見は、世間知らずの大学教授の意見だと思います。こんなことは、やろうと思えば来週でも採択できることです。しかし彼らにはやる気がないのです。奨学金制度を悪用して、国民を、若者を陥れる仕組みを造った当の本人に、こんな案を出しても、推進する訳がありません。
このままだと、もう数年も経たないうちに、国民からこの制度に対する憤懣が爆発します。これは間違いなく起こります。悪評高い官僚達が若者を食い物にしていることに納得する国民がいません。あるとすればその上に安住する既得権益者でしょうが、流石にこの間違ったシステムは、長続きするはずはないのです。そうなると他の国のように大学までの学費の無償化は、必ず起こるのです。どうせそうなるのですから、ことが最悪の状況になる前(すでにその領域ですが)に、政治家は怠けずに行動を起こして頂きたいものです。そうでないから、政治は国民に見放されていることを、肝に銘じて頂きたいと思います。