以前、「大人の旅ができる、少し地味な街“岐阜”と揖斐川丘苑」 の記事をアップしました。私は地方に行くたびに、日本の地域の持つ豊かさを常に感じます。それは農作物や魚介類が豊富に採れるというようなことだけではありません。例えば料理や宿のレベルの高さや、総菜やお菓子の美味しさなどに優れたところがあり、都市部に比べると、軒数は多くはありませんが、お店の設えや、その土地の空気など独特の雰囲気を楽しめる利点もあります。
東海地区では、美濃や尾張にそのような店が多く見られます。お店のクオリティと言うのはお客によって高められることもあり、この地域にはそうした下地があるのかも知れません。
美濃は“くりきんとん”激戦区?
名古屋駅から車であれば1時間ほどで中津川あたりまで行けます。この地域は多治見や土岐などの焼き物産地を抜けて行くルートでもあるので、時折訪れるのですが恵那山や恵那峡などの美しい景色や、広重美術館などもあり、絶好の観光ルートとなっています。そんな時、いつも迷うのがこの辺りの和菓子屋のくりきんとんです。この地域の和菓子屋市場に特に詳しいわけではないのですが、恵那川上屋、澤田屋、すやなどです。
ここで面白いのは例えば恵那川上屋には、栗菓子ばかりではなく、サブレやチョコきんとんなど洋菓子も扱っています。澤田屋やすやもそこまでではないですが、蕎麦から羊羹まで幅があり、要はこの地域の甘党の店です。この辺りは老舗であっても、京都などの老舗とは少し違っていますが、味もまた口元でほろりと崩れる塩梅などとてもGoodで、私の好みとしては京菓子よりも上位になります。以前は広い範囲で販売されていないのが難点でしたが、今はお取り寄せが可能となりました。しかしその地に行った時に、その空気や雰囲気の中で買い求めると言うのもよいものです。
尾張は名古屋市内の洋菓子店は群雄割拠の激戦区?
洋菓子は場所を変えて名古屋市まで戻ります。実は中津川から名古屋市内に戻る途中、土岐市を経由するのですが、ここには洋菓子のお気に入りがあります。シェ・シバタがそれで名古屋高島屋にも店舗があるのでよく知られていますが、土岐市が発祥だと聞きました。ここのケーキ類もよいのですが、ここのヴィジタンティーヌという焼き菓子はとてもよく、贈り物などに使うと大好評間違いない代物です。焼き菓子はそれこそ星の数ありますが、今のところベストになります。
さて、名古屋市内です。この狭い範囲に名店と呼ばれてもよい店が目白押しです。そして何件もがとても雰囲気の良い外観を持っています。このような文化が生まれた背景には当然それなりの景気の良さが持続していると言うのもあるでしょうが、やはりこの地の職人気質的な空気も影響しているかも知れません。
私は同じ業種であってもお店をランク付けする趣味はありませんし、それ程頻繁に訪れているわけでもないのですが、その時食したものやお店の雰囲気の印象しかないのですが、例えば ピエール・プレシュウズはカフェの雰囲気が普通ではありませんでした。よくある高級貴金属店を連想させるようなつくりで、外観もこの後の期待度を増すものですが、店内も、空気がナチュラルで、しかもケーキそれぞれの完成度も高く、満足すること請け合いです。
完成度と言えば千種にある フォルテシモも中々のものです。実は昨年までこの店のオーナーが、辻口傅啓氏であることをしりませんでしたが、元々辻口氏自体をよく存じ上げてなかったので仕方がないのかも知れません。ただ六本木に氏が作られたルショコラ・ドゥ・アッシュと何となく似た雰囲気がある…ような気が後からしました。ここでも店内で頂く事ができますが、賑やかで少しカジュアルな雰囲気がとても落ち着けます。ケーキ類は同じように見えてもかなり美味しく仕上げていて、やはりお気に入りになります。
良い意味で“質の文化”が息づいている名古屋の土壌
名古屋はトヨタのお膝元ですが、マザックのようなマザーマシーンや日本ガイシ、ノリタケなどの製造業が健在です。こうしたクオリティを突き詰めるような職人気質が、それを好む県民性を生み、高品質を受け入れる土壌が醸されたのかもしれません。また、名古屋から美濃に至る焼き物の産地には、前出の多治見焼や美濃焼、土岐焼以外にも瀬戸焼など、古くから製造業が盛んであったのも、その根底にあるのかも知れません。
洋菓子に話を戻すと、市内に数店舗ある レニエ・リヴゴーシュも独特でした。フランスだったと思うのですが地方の伝統菓子をアレンジしたものだそうで、旬の使い方がとても良いのです。そう言えばここの名物となっている“中津川モンブラン”も今ではすっかり人気で、これも秋の鉄板というやつでしょうか。
あと個人的に好きなのは コーヒーも一味違う カフェタナカでピアノの生演奏などコンセプトなども、これまでご紹介したところとは違っていますが、リラックスできるし、ゆとりを感じることができる空間として特筆できると思います。
時間がない時、駅周辺で持ち帰る為には
時間がなくて、これらのショップに立ち寄れない場合もあるでしょうが、名古屋駅のごく周辺である程度、手配できるのが名古屋の特徴です。例えば、上記の和洋菓子ほ多くは高島屋の地下に出店していますので、帰りにちょっと寄って求める事も可能です。時には駅隣接の名古屋のマリオットアソシアホテルの15階にある ペストリーブティックのケーキも秀逸です。ここにはパンなどもあって、ちょっとした土産代わりにもなります。
そして最後の手段は、駅構内の数か所で販売されている、その名も ピヨリンです。その形はひよこ型で、名古屋コーチン卵のプリンを中心にして、ババロアで回りを包み、スポンジクラムでコーティングされているもので、愛らしいだけでなく、食べても美味しく出来ています。ただ、そのような“ボディ”ですので、かなり気をつけて持って帰っても、3匹のうち2匹が型崩れしてしまうのが玉に瑕です。
美味しい秋を迎えるにあたって、美濃・尾張地区の和洋菓子を紹介しました。このエリアはまた絶好の観光地でもありますので、ちょっと足を伸ばして、体重を増やす覚悟ででかけてみてください。舌も目も、感覚も満たされることは保証致します。
※ブログ内の写真はHPより使用しました