日本の変革や発展を阻害する、既得権益者優遇社会の行く末

陽は昇る 私的日録
日々の移ろい・感受した
ことを書き連ねました

個人の限定を避ける為、時期や内容を多少ぼやかしますが、ある大手企業の役職を歴任し、退職後も相談役としてご活躍された知人が他界されました。知人と言っても氏とは30以上の歳の差がありましたが、なぜかよくかわいがっていただき、私が東京によく足を運んでいた時期には、時間を割いていただき、私があまり出入りができないところ、例えば経団連ビルや、時には相談役の集まりに同行させていただき、たいへん貴重な経験をさせていただきました。晩年はだれがみても好々爺的雰囲気を持たれていて、楽しい人生であったのだと思います。

共通した趣味の話では楽しい思い出も多く、またそうした役職に就かれるだけあって、真似のできない能力の片鱗に触れることも多くありました。私も氏も自説を簡単に曲げる性格ではないので、互いが納得できるまで話し込むことも多かったと言えます。

しかしながら氏は明らかに社会組織の中では特権階級で既得権益者で、自分の意に沿わせるためには時には組織を恫喝するようなこともすることがあったのは事実でした。氏は自分の所属している企業の相談役の仕事について、ほとんど覆い隠そうとはされませんでしたので、私は結構、裏話(そうとれてしまうのですが)的な情報に触れることも少なくありませんでしたが、明らかにその企業組織はダブルスタンダードであることは明白でした。誤解のないようにお話ししますと、こうした特殊役職が闇的であるのは、大企業や銀行などに限られているように思えます。中小、零細企業にも多くの相談役はいますが、彼らはその企業の将来に責任を持つ意味で駆け回っているかたが多いように思います。

通常、こうした相談役とか顧問というのは会社法に規定はありません。各企業の内規に定められているのですが、その人員や報酬、役目などは不透明であるようです。今で言うコーポレートガバナンスなど無視したような存在ですが、氏にしても出勤の日は黒塗りの高級車が自宅に迎えに来ることから始まっていたようで、その待遇の過剰さは今でもこうした慣習が残っているのかと再認識させられます。

そんな日本の株式会社の仕組みが、遅きに失したとはいえ多少なりとも変わり始めています。東京証券取引所は企業統治改革として、相談役や顧問の選任方法や勤務状況を明確に情報開示を求めることになり、これを受けて日本を代表する企業のトヨタやパナソニック、伊藤忠などが相談役の廃止を決定しました。トヨタでは60人いた対象者を9人までに削減しましたが、これなどは、こうした特権階級を養っていることを情報開示することが、大企業にとってよっぽど”不都合な真実”であることを明確にしたにすぎません。日本の社会は決して開かれているのでも、公平なのでもなく、縁故や特権階級、既得権益者が異常なまでに優遇されている社会です。例えて言えば”蜘蛛の糸社会”。小さな虫はそこに掛かって食べられてしまいますが、大きな昆虫は容易に糸など破ってしまいます。それは先の日本医科大学の組織的裏口入学システムでも明らかになりました。或いは大分県の教員採用では試験を無視した縁故関係で決められていたことが暴露されたので、”人物本位の採用枠”などという、合法的な裏口枠を設けてまで、現状を維持する流れが常態化し、これを解消する為には桁違いの破壊と時間が必要となるのかも知れません。

先の相談役の話で言うと、氏は「私達は社長を選出する時の切り札である」という趣旨のことを時折言われていました。意味はあえて説明しませんが、いわゆる政治家の票田、公務員の既得権益者優遇利権に共通する日本の「困った社会組織」であることは間違いはないでしょう。

氏との楽しかった思い出は大切にしたいと思いますが、もし日本の社会が変り、「日本社会はあなたのいた頃とは変って、既得権益者の過剰優遇される社会から、このように変わりましたよ」と言えば、おそらく氏も我が意を得たりとばかり、また楽しそうに頷いてくれるのだと、私は確信しています。

 

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