来るべき定年退職後の現実を知る
「自分の姿を見ることはできない。できるのは鏡に映った姿をみるだけだ」と言う言葉があります。私たちは日常の生活の中で、常に何かに守られていると信じています。多くの方にとって、そんな常識が音を立てて崩れる例外があります。それはサラリーマンや公務員の定年退職です。それまでの安心した生活から、一気に自らを剥き出しにして挑まねばならない現実と直面する瞬間です。
定年退職すると、ある方は、いわゆる“悠々自適”な日々が待っているでしょう。しかしまたある方は、計画的にその後の生活設計を立てることが必要になるかも知れません。いや、定年退職どころか、明日から仕事を探さなくてはならないとか、定年退職するにも仕事がないという人もいるでしょう。ここでは悠々自適な日々を約束されていない”普通の人々”の、その後についてお話しします。
これまでの戦後日本では、こうした退職後の違いは、それまでのキャリアや仕事に対する取組みの姿勢によって生まれるものだと考えられてきました。しかし、それは戦後の極めて一時期に、且つ特殊な社会環境の中でのみ見られた、一つの現象に過ぎません。日本のあらゆるパラダイムが、全く変わってしまった現在では、先にあげたすべての方々が、これから起きる現実を知って、正面から挑まなければなりません。
これから10年の間に定年退職を迎えられる方に
“これから起きる現実”とは、今後8年前後に定年を迎える方を対象としたものです。その理由は、この世代の前と後辺りに、時代の大きなクレバス(crevasse)があるからです。簡単に説明すると、1945年の終戦で、日本は文字通り世界の最貧国となり、国内の社会資本のすべてがほぼ灰燼に帰しました。
その為、時の政府はできるだけ早く復興するために、規格大量生産が可能な社会へ舵を切りました。すべてが規格大量社会への最適化に基づいた社会づくりとなったのです。
最も力を入れたのが人材の育成でした。戦前の日本は、農村社会でしたので、次男、三男、四男は合間を都市部で働いても、多くは盆と正月の帰省をすれば戻ってきませんでした。また学校も、地域別に特色や考え方を反映したものが選択でき、学校に行かないというのもその一つでした。
日本の官僚はそれを変えました。つまり“労働力は、都市で働き続けて、農村に帰らないことが”。“学生は皆と同じで、個性を持たないことが。得意を伸ばすよりも、不得意をなくす、金太郎飴的なことが”、社会的にも、金銭的にも、すべてにおいて有利になる社会の仕組みを作りました。学生では、人と違うことを“不良”と言い、不得意がないほうが有利な受験制度を作りました。個性は邪魔なものとして認識され、長髪や喫茶店にギターなどを持って入れば社会の爪弾きになる時代でした。
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高い経験とスキルを持たれて退職。関係企業に再就職をされて、あとは悠々自適の生活が待っているような“現役引退者”が、何故か新しい職場で上手く行かず、相談に来られるケースが増えてきています。うまく行かない …
やがて来る戦後の仕組みがなくなる時代になにを知らなければならないか
社会人はもっと徹底していました。なにしろ上の世代が戦争で枯渇していた社会でしたから、何でもできます。20歳くらいで会社に入ると、最初の20年は能力があっても低い給料で働いてもらい、お金が必要となる残りの20年は、役職と仕事よりも高い給料が支払われました。それでは業界内のまとまりがつかないので、会社自体に終身雇用制度や国民年金や厚生年金の2階建て、企業年金や健康保険、税制の優遇など、後先関係なくサラリーマンに有利な、ありとあらゆる“美味しい仕掛け”が施されました。年金支給額などは最初に約束された4~5倍になっていても、まだ少ないと言う人すら少なくありません。
その仕組み自体は、結果として1955年から1995年くらいまでは稼働したかも知れませんが、その後は資源の枯渇と国力の減退とともに急激に減少しました。1995年に22歳で会社に入った人の中には、こうした時代の恩恵を受けることができる人がまだ少数ながらいますが、そのあとはなくなり、同時に定年退職の概念もまた霧散するでしょう。そのぎりぎりが“あと8年”なのです。
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平成を終えるにあたって、何も残せなかった70年 私達はどのような国になるべきか
日本の外国からの観光客が今年最速で2000万人を突破したというニュースがありました。テレビでも“日本は最高”という趣旨の番組が高視聴率をとっているのか、同工異曲な番組が目白押しの状態です。実は業界関係 …
定年退職。人生に起こる5つの苦難
ここからが本題です。いま定年退職を迎える方々は、“自らを剥き出しにして挑まなければならない時代”であると述べました。中には悠々自適に残りの人生を余裕で過ごすことができる方も少なくはないでしょう。しかしこれからの退職世代では、それまでと比べて、極めて厳しい老後を余儀なくされる方々の数が爆発的に増えて行くのもまた事実です。ここではそうした世代に向けて、このあとの人生になにが起こるのか、5つの項目に分けてご説明してまいります。
1、すべての常識が激変する あまりに厳しい老後資金
2、「世界中の犯罪者が、あなたのお金を狙う…「高齢者襲撃(アタック)」
3、「勝ち組だと思っている人ほど知らない、現実社会の厳しさ」
4、「軽く考えてはいけない“心の問題”。家族、友人、孤独…」
5、「失うものしかなくなる恐怖、多様化する健康問題」
定年退職に訪れる危機 「厳しい老後資金の問題」とは