企業は従業員を守らないことの衝撃
日本人は戦後、会社を大きな家庭と考えてきました。しかし今では、そう思える企業はほんの一握りになりました。これまで、家やコミュニティ、自らの生活や時間を犠牲にして、会社に所属せよ。その見返りとして会社は従業員を守るという暗黙の…と言うか、明確なルールがあったのが、あっという間に会社はその時、仕事をしに来るところに過ぎないので、それ以上の何物も期待されては困るというサインが出されました。人々は人生のルールの梯子を外されることになったのです。
年金制度の事実上の崩壊と、あくまでもそれを誤魔化す官僚組織
次の要因は年金問題です。これについて詳細を述べると本一冊にはなるので、ここでは省略しますが、
問題は、完全に破綻している年金制度を、あたかもまだ役に立つものだと取り繕う厚生労働省の役人や、これほど深刻な危機にも関わらず、一切追求しないメディアの姿勢です。今50歳代の方の多くは、完全に年金の掛け金を支払っても、今後の法改正などで65歳~70歳から、ごく僅かな支給しか受けられなくなるか、年金制度そのものが破綻するかのどちらかのシナリオしか残らないのです。
「そんな否定的なことを言うのは、社会の混乱を招くので控えるべきだ」と口角泡を飛ばして官僚などは言うでしょうが、是非とも一方通行ではなく、国民からの質問に具体的に答える姿勢を見せるべきですね。
年金“オルモースト・ゼロ”の衝撃
これが老後崩壊にどう影響するのかと言えば、言わずと知れた年金受給に関する問題です。今は誰もが“○○歳になって年金を手にできるようになったら”と言うのですが、これからは、それが満額手に入ったとしても、その後の生活をするには全く足りなくなります。特に70歳を過ぎて病院のお世話になるころには、退職金は底をつく事になることになるでしょう。高齢者になってから稼ぐ術が無くなる中で、体力と資産の蓄えがなくなることは、まさに老後破産の典型的な姿になるでしょう。
金利を払わないことを常とする銀行の台頭
しかしそれでもこれまでは働いて、ある程度の貯金をしていれば、それなりの資産形成は不可能ではありませんでした。それが根本的に崩れたのは、やはり銀行が預金金利を払わなくなったことが原因でしょう。若い方の中には、日本の銀行が金利を払っていたことがあるのを聞いて、驚く方がいると聞きますが、止むを得ない事です。あれほどの収益を上げながら、銀行は一旦金利を払わない“権利”を得ると、その後は取り込む一方になりました。
まだ銀行が預金金利を払っていた頃、高い時は10%近い金利があったことがありますが、通常では3~5%だったと思います。しかも複利計算をすると、約10年の間、口座に入れているだけで、持ち金は倍にはなりました。そんな生活を40年送るのですから、実質預金にはかなりの余裕ができてきます。これがゼロになったのですから、そんな環境でお金が貯まるはずはありません。
本当に高齢者はお金持ちなのか
そこに、先に述べました“数字”の誤魔化しがあります。高齢者に対する数字は先にも述べましたが、何らかの意図を持って流されるものですので、迂闊に聞いているととんでもない間違った知識を植え付けられることになります。
例えば“高齢者消費は100兆円市場”という記事を覚えておられる方もいらっしゃるでしょう。これを聞くと“やはり、高齢者市場は大きいものだ”と感じられるのではないでしょうか。しかし、この前年に公表された別資料によると、この前年の60歳以上の人口は4000万人になるそうです。先程資料の作為に触れましたが、この場合は目的の違う複数の資料をミックスしているので、ある程度信憑性があると言えますが、これで計算しても、年間ですると一人当たり月20万ほどの消費にしかなりません。つまりこれまでの消費の主役が60歳以上に移り始めただけで、60歳以上が異常にお金を持っていると言う印象は間違いであることが分かります。
また、この100兆円と言う物の定義についても、何が定義の対象となっているのかについては議論を待ちません。例えば、日本の60歳以上と言うのは、既得権益者層や超がつくほどの高額収入者が多く含まれていますし、普通の家庭では住宅ローンの支払いの残も消費に含まれるでしょうから、我々一般庶民が“消費”と感じるものとの差異は、かなり目減りして2割ほど差し引くのが順当だと思われます。
重ねて言いますが、高齢者の消費とは、豪華クルーズや世界旅行を繰り返す層と、反面爪に火を点すように慎ましやかに暮らす層に分かれ、これは年代とは全く関係のないものだと言えるのです。
50歳あなたには未来があるかをシミュレーションしてみると
これらのことから言える事は、特に現役世代と呼ばれる方々がこれからどのような働き方を送るべきかと言う事ですが、20歳~40歳までの“前半期”と40歳~60歳までの“後半期”とは、内容が変わってきます。ここでは“老後破産問題”について取り上げていますので、後半期の世代についてお話しして、前半期については別の機会にお話し致します。
さてこのような環境にある40歳~60歳世代に言えるのは、①一般的なOB世代や先輩世代など目上の人々の経験や意見は、ほとんど役に立たないということです。OB世代は過剰に国や会社に守られてきた世代ですし、本当の意味での競争の経験はありません。しかも今から考えると宝くじのような銀行金利、退職金、年金などをしっかり受けてきて、その為に生じた“仕組み上の灰汁”の部分は全て次の世代に受け継がせたのですから、社会の見方や経験は“不思議の国”のものに他なりません。これからの時代に生きる人々には何の役にも立たないのです。
残りの人生設計がし易くなった、40歳以降世代
40歳を越えると逆算的に見て、自分の人生の残りの可能性がある程度、判断できる、という事です。例えば高度経済成長期と言う以上な環境下では明日は今日より良くなると皆が信じていましたから、自分の可能性も広がって行きました。サラリーマンが与えられた仕事でコツコツ働いていると、大きなチャンスに巡り合えたのも、この時代の特徴でもありました。しかりこれからはそのような棚ぼたは期待できません。それは先にも述べた3要素、“会社文化”“金利”“年金”が壊滅したのですから、今あるものに対する足し算ではなく引き算で考えるしか方法がありません。そうなると収入に対しての、かなり厳しい環境が浮き彫りになってきます。
会社はこれから働きに対して高い給与を払わねばならない後半期世代について“そんな時代ではなくなった”と言うスタンスで遠回しなリストラ対象とするための知恵を絞ります。日本でもアメリカ映画の「マイレージ・マイライフ」に描かれたような、人材派遣会社に首切り業務を委託する時代がすでに近づいています。特別な世界に通用するようなスキルを持っていたり、会社が高収益を継続できているのであれば別ですが普通のサラリーマンの40歳はサハラ砂漠の真ん中にコップ一杯の水を与えられて置き去りにされるような時代になるのかも知れません。
全体の60%が地獄を見ると言う資産と生活保護
現在、預貯金が1000万あっても、これからはプラスには転じないことは述べました。特に50歳を過ぎると多くのサラリーマンが資産の“持ち出し”状態になります。企業業績の悪化している多くの企業は給料面で絞って来るでしょうから貯金など期待できません。そこでこんな計算が成り立ちます。
まず毎月の生活費ですが、定年退職後と言っても30万円くらいはかかるかと思います。つまり夫も妻も60歳からも働き続けない限り、年金までの5年間に1800万円かかる事になります。では年金はいくら入るでしょう。夫婦2人で15万を想定します。これによって5年間で900万円の収入となり、60歳からの10年で出費が2700万に“軽減”されます。その後月の消費が25万円となったとすると70歳~80歳までで3000万円の消費となります。年金で1800万補足されますので締めて1200万円。そうです人生80年としても、60歳時点で 3900万円の蓄えがなければ80歳にして破産します。
これからは、会社が労働者を数字として扱うようになり、その生活に責任を持たなくなります。年金も雀の涙、そもそも既に崩壊しているですから、これからの法改正によって果たして本当に支給を受けられるかさえ流動的、且つ退職金などそもそも期待も出来ず、銀行は預けるだけでトータルするとマイナスとなるのが分かっている環境で、今50歳の方が60歳で資産が形成される可能性は…。