インバウンド景気バブル。危険な兆候。国内需要を無視する愚

陽は昇る 私的日録
日々の移ろい・感受した
ことを書き連ねました

日本と世界を繋ぐ窓口でもあるのが空港です。そんな日本の空港の国際線ターミナルで、唯一日本らしくない場所をご存知でしょうか。先日関西国際空港で経験した事ですが、それはトイレです。時間や状況にもよるのでしょうが、私は日本のありとあらゆる場所のトイレの中で、あれほど汚く使われているトイレはみたことがありませんでした。

もちろん、それは外国人の団体客が自国の感覚で使用してるのでしょうが、私はここでよくある”インバウンド観光客批判”をするつもりは全くありません。今回強く言いたいのは、日本の企業経営者などが、いつまでたっても安易にインバウンド需要だけに寄りかかる”ヘタレ経営”を見直そうとしない”無能力姿勢”についてです。

大阪は、インバウンド需要がその経済効果を高めるまでは、ほぼ死にかけた都市でした。今ではあまり皆が忘れてしまっていますが、戦後の乱れた行政の組織的暴走で”破産都市”に陥っていたのを、橋下知事ひきいる維新の会の奇跡的な行政改革で最悪の事態を回避し、返す刀で安定都市に向かった足場固めを進めてきたからこそ、インバウンド需要が高まった時、それまであった既得権益層や公務員組織の利益独占の壁に対抗できました。そのインバウンドは間違いなく、今の大阪、いや関西経済を押し上げる原動力になっています。

死にかけていた都市経済界がインバウンドという特需景気によって、蘇るきっかけを得たのは、先に述べましたが偶然ではありません。ですがせっかく都市の再生の道筋が見えてきたのに、肝心の民間企業がすっかり安心で簡単な”特需景気”によりかかり、本来の構造改革に着手さえしようとしないのはいただけません。それが証拠にインバウンドの聖地、例えば道頓堀や心斎橋、インバウンド目当てに全面改装した百貨店(愚かなことに)には日本人客は寄り付こうとはしません。また関西でも国内需要者の消費の下落に歯止めがかからない状況となっています。

これまで何度も中国人観光客頼りの景気対策が打たれましたが、現実問題として、それが5年と持ったことがありません。また今のインバウンドとは多少違いますが、特定の国への渡航を進めて特需景気をつくり、外交問題の有無に際して一気に締め付けをすることで、景気の衰退を演出して、相手の国内基盤を崩すなどという戦略は何度も経験しているはずです。今回は台風の被害とタンカーの事故でそれが別の形でやってきたのですが、ことの影響が長期化すれば答えは同じになります。

関西だけでなく、日本全体でインバウンドに頼り切り、この景気の良いと言われるタイミングで国内需要の建て直しに着手しようとしないのでは、元の木阿弥となるのは明白です。企業経営者の方に言いたいのは、いくらインバウンドで今短期に収益をあげても、そんなものは5年も持たないもので、あなたの才覚でも能力でもないのだということ。また、一旦逆風となった時は、あっという間にそれまでの収益など飛んでしまうという認識を持って頂きたい。その上で、真の能力を発揮するために、国内需要の再構築にいまこそ知恵を使っていただきたいということです。

冒頭に、関西国際空港のトイレの話を紹介しました。美しい日本の国土を汚物にまみれたような状態にして、インバウンドだけを頼りにした不安定な繁栄…。私達の未来はそこにはありません。

 

 

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