突然の実現。100年越し、歴史的快挙
イスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)が国交正常化に合意したと、アメリカのドナルド・トランプ米大統領が13日発表した。これについての世界の反応は、あまりにも薄いと感じてしまうのは私だけだろうか。筆者はこのことが今後、世界に大きなパラダイムの変化を生むに値する要因だと考えているので、そのあたりをご紹介したい。その前にまずはBBCニュースから、一部抜粋してみた。
仲介役を果たしたトランプ氏は声明で、関係国が合意を「歴史的」と呼び、和平に向けた画期的な前進だと評価していると述べた。
イスラエルが湾岸地域のアラブ諸国と外交関係を持つのは初めてとなる。イスラエルは1948年の建国後、アラブ諸国では隣国のエジプトとヨルダンとだけ平和条約を結んでいる。
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イスラエルとUAEは、イランをめぐって懸念を共有し、非公式に接触していた。
一方、パレスチナのリーダーらは驚きを示していると報じられている。自治政府のマフムード・アッバス議長の広報官は、合意は「裏切り」だとし、UAEにいるパレスチナ大使を帰国させると述べた。
合意の内容
今後数週間以内に、両国の代表団が合意文書に署名する予定。投資、観光、航空直行便、安全保障、通信、テクノロジー、エネルギー、医療、文化、環境、大使館の設置などで協力関係を築く。
この日発表された共同声明では、「中東で最もダイナミックな社会と発展した経済を持つ2国が、経済成長を促し、技術革新を進め、人と人の関係を強化することで、地域を変革する」とした。
またイスラエルは、トランプ氏の中東和平案で「規定された地域について、主権を宣言することを停止する」とした。
トランプ氏は1月に示した「平和のためのビジョン」で、ヨルダン川西岸のイスラエル入植地におけるイスラエルの主権を認めると表明。パレスチナはこれを国際法違反として強く反発していた。 (BBCニュースより一部抜粋して掲載)
中東和平問題は、そもそもアメリカというより、ヨーロッパのバランスオブパワーが影響し合って生まれたものでもあるので、その中心的存在である英国があまり歓迎しない気持ちは分からなくはないが、中東に暮らす人々にとっては生命の問題である。100年間、全くと言ってよいほど進展がなく、“問題はあっても、解決しない問題”と言われてきた中東和平に道筋が築かれたことに、世界があまり反応しない理由は、やはりこれがトランプ政権下でとりまとめられたことに対する反感があるのかも知れない。
世界のメディアや国家の多くがトランプ大統領を忌避する理由
とにかく世界のメディアは、トランプ大統領が嫌いだ。しかしトランプ政権は、これまでのところ着実に選挙公約を果たしてきている。いくらメディアがトランプ政権の正の功績については一切報道せず、出どころの怪しい批判や疑惑と言われるような負の報道だけにしようとしても、そんな小さな手のひらでは、覆い尽くすことはできるものではない。
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しかしそんなトランプ嫌いなメディアも、さすがに中東和平交渉がとりまとまったことについては驚きを隠せず、ニューヨークタイムズやワシントンポストですら、認めざるを得ないようだ。もちろんこれまで反トランプを強引に進めてきた手前、素直には認めることはできないと見えて、「中東和平を実現したと、アメリカ政府が発表」といって印象を薄めたり、「パレスチナは反対している」とか、「中東和平の本当の狙いはイラン」などとトーンダウンすることは忘れておらず、挙句には「大統領選挙用のパフォーマンスに過ぎない」と付け足したりしている。所詮彼らには「事実よりも自分の利益や感情」が優先するのだろう。
今後の中東和平の読み方
そんなことより大切なのは、今後中東和平の行く道筋についてである。客観的事実として、これまでイスラエルを国家として承認しない国は、国連加盟国35か国あり、そのうち中東国は25か国あったのが、今回の中東和平締結を受けて次々と賛成派に転じている。この様子では、限られた一部の国を除いて国家承認国が主流となるのに、それほど時間はかからないだろう。では一番の問題であるパレスチナはどうか。実は筆者は、すでにパレスチナ自体、中東和平交渉締結に舵を採る準備はできているのではないかと考えている。
もちろんそれは簡単なプロセスではないだろう。そもそもこの混乱の根底には2千年以上に亘る宗教対立があるし、世界中には中東和平が実現すると困る国や企業、政治勢力などが瀰漫している。だから彼らにとっては中東和平など実現させないためにはどのような政治圧力からテロ行為も辞さないだろう。闘いは厳しいものとなるだろうが、世界の国々の正しい発展のためには闘う価値はあり、遠くない将来には、100年の時を隔てて中東に平和な環境ができることになる可能性が高くなる。
日本が発案したイスラエルとパレスチナの和平の貴重な提案
おそらくかなり以前から、イスラエルもパレスチナも殺戮の歴史に終止符を打ち、殺戮に使われるエネルギーを経済や産業の発展に費やし、中東全域が大きな経済地域としたい意向があったのではないかと思うと言った。このことは、このブログでもずい分以前に採り上げたので下記でもう一度、お読みいただきたいのだが、日本の麻生外相(当時)が、“平和と繁栄”として、両国に「共にしっかり働いて、共にお金を儲けよう」と呼びかけ、日本側から技術、資金を含めて見返りを求めない主旨の提案をしている。日本は国際的政治力についてはお世辞にも影響力があるとは言えない状況ではあるが、今の安倍首相にしても、当時の麻生外相にしても、画期的なコンセプトをアメリカに提供して、日本は黒子に徹するという、言わば“名を捨て、実を採る”方策を採ることにかけては実に巧みであり、有能である。