ICタグやセルフレジ。日本の物販業にどこまで必要か? 

ICタグの導入はなにをもたらすか

もう20年以上前ですが、IBMがICタグを扱ったテレビコマーシャルをしていた時期がありました。未来の設えのショッピングセンターにロングコートの男性が現れ、店内の商品を次々にポケットにねじ込んで行き、それを警備員がチラチラ見ているカットが入ります。やがて男性はそのまま店外に出ようとして警備員に呼び止められます。「お客様。レシートをお忘れです」。
当時、ICタグの未来を扱った内容があまりに印象的であったのでよく覚えているのですが、その後、なかなか進捗が見られませんでしたが、最近ではGUなどで導入され話題になっていますが、それでもまだ本格的な動きには程遠いように思えます。

スーパーマーケットなどでは、以前からバーコードを利用したセルフレジはありましたが、当初からあまり評判は良くありませんでした。理由としては意外に時間も手間もかかることにありました。また、煩雑でお店側も値下げや品数の多さに対応しきれていないこともありトラブルも多く、正直これならばスピードレジ(例えば5品までの清算専用など)で充分だと思えるものの範疇を越えません。

先のIBMのCMにあるように、ICタグを活用すると、セルフレジすら不要というシステムも考えられます。GUなどではセルフレジのBOXに放り込めば即座に清算できると評判ですが、本来はチップ入りのカードを持参さえしていれば、商品をとって店を出るだけで決済されるなども可能です。しかしなによりICタグの利点は例えば棚卸などの業務が不要になったり、その事でこれまでと別次元の店舗運営が可能であるのも魅力といえば魅力かも知れません。因みにICタグの他にRFIDと言う言い方もありますが、正確にはRFタグ、或いはICタグを活用したRFIDシステムということで同じ意味になります。

“離・消費者”か“接・消費者”か

しかし、ユニクロのように、アイテム数も決まっているだけでなく、自社製品の管理システムが完璧に稼働できる環境にあるのであれば、このシステムは大いに価値があるでしょう。しかしそのほかの物販業で、このシステムが必要な企業がどれだけあるでしょうか。人手不足解消の切り札的な扱いをしていますが、その分、充分なコストもかかっていますし、日中などはガラガラの店舗などでは無用の長物になるかも知れません。そもそも日本の物販業ではそんなシステムを導入して、わざわざ消費者との距離を遠のけるような“余裕”のある企業がどれだけあるのでしょうか。ネット販売が市場に食い込んできている現在、わざわざ店舗に足を運んでくれる消費者にセルフを強要することで、何を生むと考えているのでしょうか。私は例えユニクロでもICタグを利用したセルフレジを導入した店舗であれば、それはお客様の軽視だと感じてしまいます。

これは現在では少数かも知れません。また、現場は人手不足かも知れません。しかし、それを理由にこの数十年、日本企業はシステムに多くの予算を割いてきました。今でもAIの導入とか、高感度デジタルサイネージの導入など、一般消費者がイメージし難いものの導入が盛んです。またポイントカードとか、80%オフなどと言う常識外の企画が瀰漫しています。しかし、それが消費者の心に響いているかと言うとまた別の判断になっているでしょう。
しかし果たして今の日本企業で、消費者の支持をあまり考えなくては良い、或いは消費者の動向をデジタルデーターで把握するような“余裕”のある企業はどれほどあるでしょうか。すでに物販業では実店舗の商品に対する信頼は地に落ちています。プロパーで買うなどと言うのは馬鹿げたことだと考えられています。だからアパレルなどでは年間の70~80%の期間で大幅値下げ期間を設定しなければならなくなっていますし、それを見越した価格設定もしています。これでは消費者は気に入ったものを買うというより、バカを見ないように注意することに力を注がねばなりません。その上、店側からのほとんど唯一の接点であるレジの場を削ぎ取れば、あとには殺伐たる風景が残るように感じます。
これから作らねばならないビジネスモデルが“離・消費者”なのか“接・消費者”なのか、それくらいの試行錯誤をしても罰はあたらないと思います。

 

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