”振袖レンタル詐欺事件”。若者の夢を奪う蛮行ながら、そんな中で日本の成人式にちょっと想うこと

新年早々けしからん話があったものです。成人式の晴れ着・着付け詐欺です。「hare no hi」とかいう振袖レンタル会社の悪質な詐取行為です。確かに詐欺というのは、どのようなものでも被害者にとって悪質で許せないものですが、これから新成人になるという女性の晴れの舞台を台無しにしてしまったという点では特にカチンと来てしまいます。
これに対するメディアの報道には多少疑問点もあります。被害者に関しては頼まれもしないのに小学校のアルバムや同級生まで引っ張り出してくるのに、この詐欺会社の社長については「社長」と言っているだけです。名前くらい報道しろよと憤るのは私だけではないと思います。
もうひとつ、関連店舗の中には見るに忍びないというので店舗を開けて対応した「良心的」な店舗があったというスタンスですが、しかし聞くとすでに3か月前から給料も払われておらず、年明け以降、会社とも連絡がとれていなかったとか。この業界の実状は知りませんが、明らかに異常な状態であったわけでしょうから、店長にはそれなりの動きをすることも求められるのかも知れません。

日本の盛大な成人式の本質はなに?

閑話休題。私は毎年、成人式の報道を見るたびに違和感を感じます。それは壇上に駆け上がろうとして係員にタックルされる光景でもなく、なぜ連休があって前ですれば遠方からも来易いのに後でするのという疑問でもありません。それは新社会人に役所が成人式を“してあげて”、それを新社会人側も楽しそうに受け入れているのかです。
例えば浦安市では毎年、TDLで盛大に行われます。横浜でもアリーナで日本最大の式典が執り行われています。芸能人が登場するところもあると聞きます。市長や市会議員にとっては絶好の売り込み場所でしょう。休日出勤の公務員には民間では考えられない手当が施されます。しかしながら、なにをどうしようと、これらには「費用」がかかり、これは「税金」です。日本国が借金まみれだといわれているのに、これを是正しようとする向きはみられません。

役所がしてくれる成人式が、本当に若者の成人を祝う儀式であるのであれば、派手な演出は果たして必要でしょうか。また一歩下がってみて、役所にしてもらう成人式が、それほどありがたいことなのでしょうか。或いは成人式が同窓会でなければならないでしょうか。仕事で成人式すら出られない人もいるでしょう。日本の若者はそれほど“お祭り”に餓えていますか?
「成人式を家庭でしよう」とか「俺は(わたしは)自分の祝いは自分でします」というような見識や考えを持った人がもっと増えてきても、それは普通の反応ではないかとすら思えます。日頃、社会や政治に参加もせずに、貰えるものは貰おうという姿勢に疑問を感じることはないのでしょうか。私は唯我独尊的な若者がいれば、たいへん“カッコいい”と思います。

出でよ!気骨ある若者

例えばアメリカではプロムというのが近いかも知れません。これは学校行事で大人としての通過儀礼のようなものですから、それほどお金はかかりません。なにより見も知らぬ役所の方ではなく、自分や家族、近所の人々からの祝福と明日から一人前だという意識を植え付けられてゆきます。ヨーロッパなどでは似たようなものを知りません。今回の晴れ着詐欺の被害者の方には心からお気の毒に思いますが、同時にこの1日のためにレンタルでも40~50万の費用をかけるっていう風習が、はたしてこれからの社会に定着し続けるかと考えると疑問でもあります。「いいじゃないの。幸せならば…」という歌がありましたが、「20歳にもなって群れて戯れて何が楽しい!」とか「20歳になってから成人だと言われて何が嬉しい!」。そんな声を聞きたいと感じるのは少数意見なのでしょうか。

 

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