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行き過ぎた高齢者過剰優遇制度社会。その陰で若者は身も命も削っている現実
「介護の仕事は楽しい」
「介護の仕事は、多くの方と触れ合えるので好き」
「介護は人の役に立つ素晴らしい仕事だ」
「介護職は自分のキャリアアップ役立つ」
巷でよく聞くフレーズだ。しかし介護の現場で働く人によくよく聞くと、自分が選んだ仕事だからそう考えたり、少し推し進めて聞くと、社会からそう考えさせられているような人が、かなり多くいる。また明らかに「最初、現場を知らなかったからこの世界に入ったが、実情を知った今は、絶望しかない」という人も少なくなく、中には、介護施設で患者に対する虐待があったというニュースに「胸がスッとする」と答える現場の人も多い。最初は耳を疑ったが、本音のところで、そう考えている職員があまりに多いのには驚かされる。
しかし現場を知るほど、介護職員の現場の悲惨な状況は浮かび上がる。人手不足による過剰労働、患者からの暴力、劣悪な労働環境、パワハラ、低賃金、想像を絶する劣悪な職場、患者の狼藉…。それらにひたすら耐えなければならない。こうした事実は、一般的に情報として伝わることはなく、また当事者でない限り、誰も興味を抱かないことだが、いくら美辞麗句を並べてもとても勧められる仕事ではない。
団塊の世代への点数稼ぎに、未来を担う若者を翻弄するな
「社会は介護職を褒めそやす。でも全部嘘。僕は人生の中で、あれほど(介護職の現場)思い出すと吐き気をもよおすような屈辱的な経験はない。毎日、患者から罵声を受け、排泄物を投げつけられるなど日常茶飯事。感謝の言葉? そんなのは聞いたことはない」。
30歳で介護職経験者のA君はこうも語る。「僕の周辺でも、多くが転職するか鬱で病院通い。僕もこんな仕事に関わったために心を病みました」。もちろんこれはA君の個人的な感想だが、同様の経験を持つ若者があまりにも多いのは、隠し覆せない事実でもある。
高齢化により、特に団塊の世代と言われる人々の介護が激増する中、10年もすれば需要が激減することが分かっている介護施設や人材の確保に、国も行政も本腰を入れるわけはない。安く雇用でき、元気に活動できる。構造不況で仕事がない若者を、その仕事に就かせるのであればことは簡単だ。彼らの将来どころか、心や精神状態などお構いなし…といえば言い過ぎだろうか。しかし若者に政治家や官僚の無策を押し付けていては、日本という国の将来はない。福祉を食い物にしている政治家は多くお見受けするが、この問題に正面から取り組む政治家はみたことがない。
新型コロナで急速に進む「少子化」。制度の見直しで若者の犠牲を緩和するには
新型コロナの影響で、今後益々若者には仕事がなくなる。だからと言って、自身も家族も、安易に現行の介護職を選択することは絶対に避けたほうがよい。病気や高齢で自分のことができない患者の下の世話、具体的には糞尿処理や、言われなき罵声、家に帰ってもとれない独特のアンモニア臭。生活ギリギリのわずかな給料、何の希望も生まれない職場。そんな世界に身を置くのは、いずれの時代、どこの国でも、決して普通ではない。
しかし、それでも高齢化の中では、この仕事が必要であるのも事実だ。ではその穴をどう埋めるのか。答えは簡単、給料だ。若者の介護職での給料の相場は、手取りでせいぜい15万前後。これを是正し、職員の給与を8~10倍に増やす。もともと経営サイドには充分な収益が保証されている仕組みだ。確かに8~10倍というのは極論だが、もし財源が不足するというなら、不足した部分は国が補填する。もともと若者の犠牲、隷属の上に成り立っている制度だから、精神的耐久期限は3~4年が限度だ。だとすれば3~4年我慢すれば、人生をやり直すことができる。10年後の患者激減の影響も最大限抑えることもできる。なにより、若者を奴隷のごとく使い捨てする社会的仕組みを改善させることができる。若者の人的資産をいかに残し、将来の日本のために活かせるかを考えれば、お釣りがくるというものだ。同様のことは理学療法士や作業療法士についても言える。国家資格の名の下に大量に資格者が増えているが、すでに過剰人員が問題化されていて、やはり彼らも将来不安に苛まれている。
もちろん、介護職に喜びを見出している若者がいる(のかも知れない)ことはあるだろう。しかし、繰り返しになるが多数の若者の精神や命の犠牲のうえに成り立っているような制度は即刻改善しなければならない。団塊の世代、既得権益者、或いは政治家の人気取りや、省の利益しか考えない官僚の無知無策のために、若者の将来や命を犠牲にしている現状は、重ねて絶対に是正しなければならない。
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