企業の後継者育成に必要な考えとは
レライアンスの業務に「事業継承」や「人材育成」に因んだものがありますが、これには「後継者育成」も含まれるのですが、最近増えてきているのがこの分野です。これまでは、外部に委託するものとしては実務代行が多く、例えば経営数値の管理や検証などのように難しい専門分野と外部に任せるものが中心だと言えます。しかし経営者が、会社の中枢とも言える業務を外部に任せるということに関する疑問も出てきているのも確かです。例えば大企業が自社の人事や総務部門を完全アウトソーシングすることは今では珍しくありません。これによって人件費は削減できますし、アウトソーシングを受けた企業も高い能力を発揮するかも知れません。アウトソーシングの活用なそれなりの利点はありますが、企業としてはそもそも別の会社ですので、自社の命運と顧客のそれを比べれば、どちらが大事かと言えば答えは言を俟たないでしょう。自分の人生の選択として来た若者を、自社が採用する能力がないのはどうかと言われれば”時代が変わった”としか言いようがないのでしょうか。
古の教えから学ぶ
ところが中小の企業では、経営者の方が自分に欠けているという判断で、仕事を依頼してくる例がありますが、私達で多いのは「事業継承・人材育成」です。依頼目的が業界のイロハや人脈の継承などかと思いきや、「経営者やそれに付随する立場の方のモラルやモットー、広い意味の企業人哲学」を好まれる傾向にあります。ですので業務も江戸時代や明治時代の私塾のような雰囲気になります。
参加者によって内容は若干変わりますが、よく「無欲萬両」や「経営の三法」から始めることが多いと思います。例えば「無力萬両」については、経営とは利益を上げる経済活動にほかなりませんが、日本に於いては例えばアメリカンドリーム的な感覚とは、根本的に違う点を聞いてもらいます。歴史の見方でも「日本は権威と権力の両方を持つことを良しとしない」と言われますが、経営でも「貯蓄十両、儲け百両、見切り千両、無欲萬両」ということばがあります。これは「儲けはこれまでで、あとは儲けにはならなくても社会に寄与する姿勢」を打ち出さなくては、世間から認められない”事実”があります。どのような経営方針をとるにしても、まずその事を知っていなくては日本では認められない背景があることを知ってもらいます。
古からの言葉には未来の指針になるものが大変多いと思います。経理業務や経営分析をアウトソーシングしている企業がそれによって業績を”継続”して伸ばせるかと言えば、甚だ疑問ですが、経営哲学を学ぶ社員が多い会社は信頼できる。私はそんな気がしています。