飲食店経営の非常識  お店の設備や店舗投資コストのツケは御客様に廻してはいけない

外食産業の典型的な盛衰

よくあることですが、あるエリアで人気のお店。1店舗ですが、大変美味しくて接客も良いのですっかりファンになりましたが、当然お客様も激増。そこで、別の地域に2号店がオープンします。家に近いので2号店に行くと、いつもの美味しさ。でも数か月通っているうちに、なんとなく“違ってきている”と感じ始めます。そこで久しぶりに1号店に戻ると、そこも…。何か分かりませんが、自分の知るあの店ではなくなっている感じがする…。
こんな時は、そこの店の素材が前よりも落ちているとか、経営者がお店の仕事と増えたバイトスタッフの世話で細かなところに手が回らなくなった。或いは借り入れした銀行からの融資を少しでも早く返したいので、利益率の高い新メニューに換えたとか、他にもありますが、大体はそんな理由から起きています。


人の性ですが、慢心を戒めるのは中々大変です。体調が悪かったり、明らかに出来の悪い日などは必ずありますが、そんな日でもお客様が食べログなどを見て殺到していたら、徐々に手を抜き始めて、数か月もしないうちに情熱を失います。残念ながら人と言うのはお褒めの言葉の羅列より、“今日の出来は悪い。最近天狗になってるのではないか”というような、厳しい指摘がない限り、中々ステップを上げて行くのは難しいものです。先の例は店舗を増やした場合を設定しましたが、店舗数は変わらなくても、超人気店になった場合も同様の事が起こります。この危機を乗り越えることのできるケースはかなり希と言えるかと思います。

外食産業の新常識

そんな慢心は、徐々にエスカレートして、新メニューや店舗、設備投資にかかったコストも“適正経費”だと考えて、商品原価に加えて行きます。自分が休暇で家族と海外に視察に行った費用も“この味を作る為の必要経費”だと理屈をつけてコストに反映させます。挙句は銀行からの借り入れを早く返すのが、適正な運営をするために必要だと、当初計画を繰り上げる形で一気に収益率を上げようとします。
若い経営者の方と話をしても、“それが悪いのですか”と真剣に聞いて来ます。そんな時は正直返答に困ります。その方の判断が、根本的なものの考え方からきたものか、これまでの人間関係からか、現在の慢心からか、或いはその幾つかの要素が混じったものか、その辺りを探り出さなければ理解し難いからです。お店の盛衰には様々なパターンがありますが、一気に燃え尽きたいのであれば別ですが、長期に反映させようと思えば、商品か顧客を増やす努力しかないのです。それ以外は必ずと言ってよいほど、お客様からの信頼を失墜します。そしてその前に自分の情熱がなくなるのです。
この数年、外食産業をとりまく環境は激変しています。そしてその中には、消費者の利益に繋がった変化も少なくないと言えます。そうした環境の変化に合わせて、個々のお店の経営者自身も新たな常識を持つべきでしょう。

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