金足農の大活躍の騒ぎが収まったら、少し税金の使い方を検証してみましょう

陽は昇る 私的日録
日々の移ろい・感受した
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今年の第100回高校野球選手権大会は異常なまでの“金足農フィーバー”の中で、テレビに釘付けとなった方も多かったと思います。“県立高校、それも農業高校の大躍進で久しぶりに高校野球の爽やかさを見た”とか“環境でなく一致団結すれば、大きな壁も乗り越えられる”などの評があり、メディアの騒ぎ方は、春夏連続優勝を果たした大阪桐蔭高校など眼中にないようでもあります。
このブログでははっきりと高校野球の限界を記事にもしています(文末にリンクを貼ります)が、しかしすこし事実関係も知っておくのも悪いことはないでしょう。

投入された税金、4000万円越え。官製高校野球強化プラン

私の知人は、この快挙については“当然”と冷ややかでもあります。2011年、県議会で当時の議員から“秋田の甲子園代表校はこの10年、ずっと初戦敗退を続けている。税金をつぎ込んでも、強化する必要がある”ということで、その年から予算に組み込まれました。

もちろん、議会での承認で決まったことで、一般市民のほとんどは高校野球だけに税金が投入されることを知らなかったと言います。
以来、これまで4000万円を超える税金がつぎ込まれました。予算案は一昨年、「秋田型高校野球育成・強化プロジェクト」と新規事業の扱いで継続されましたが、誰が見ても実質的な継続です。その資金の下に優秀な技術者、指導者が雇われ、科学的指導を行い、その範囲は小学校向けの野球教室まで広がっています。こうなると“爽やかな高校野球”というより“官製(秋田県と高野連)秋田県高校野球強化プラン”という色が強くなります。

アマチュア・スポーツ界はボクシング協会のような税の無駄遣いの温床という指摘も

つまり全国から選り抜きの選手を集めるのではなく、小学校から高校野球で勝つことを目的とした公共事業化をしている訳で、さてこうなると“高校野球の原点”などとは言えないのではないかという知人の意見も納得できます。必ずしも秋田県人だからと言って、皆が賛同しているわけではないようです。今回の大躍進でこのような声は吹き飛ぶでしょう。しかし税金の使い方として、果たして妥当であったかについては、最初から寄付金を募るとか、クラウドファンディングを活用するなどの可能性も充分考えられるわけですから、秋田県民も考える必要があるでしょう。

他の都道府県にもよく似たケースがあると言われます。しかし、日本人はもともと、税の使い方について、あまり真剣ではない国民性を持っています。ギャンブルのように、ずっとお金を使い続けていれば、いつか成果はでるでしょう。しかしそれが民意ではなく、一議員の思い付きで決まるのであれば、公務員や県・市会議員は税に対する認識と謙虚さが全く不足していると言わざるを得ません。そしてそれをただ漫然と見逃している県民の体質が、ボクシング協会などに瀰漫するアマチュア・スポーツ界の不祥事の温床、選手の慢心になっているのではないでしょうか。

人気の衰えてきている高野連が、主催者の朝日放送と一緒に過剰に騒ぎ立てるのにも違和感がありますが、そもそも“なぜ高校野球”だけが、税金でそのような特別待遇を受けるのか。今回2億円を超す支援金が全国から集まりましたが、余剰金の行方は? 今は金足農=地味で爽やかな高校生の快進撃の構図で視聴率を稼いでいますが、多分一粒で3度の美味しさを狙うメディアですから、あとあと“どこに消えた?支援金”などと騒ぐのでしょうが、そうなると金足農自体の選手の努力にもケチはつくでしょう。

これからしばらく秋田県が甲子園で実績を残すことは間違いありません。しかし問題は、こうした秋田県がこのような”公共投資”で、成果を出せば、全国の県議会で同様の税金の投入が漫然と広がることになるでしょう。さてそうなると、有権者はほんとうに高校野球への税金の投入を認めることになるでしょうか。そうでなければ高校野球全体の評判を押し下げることになるという面も考える必要があるでしょう。
これだけ、皆が万々歳と騒いでいるときだからこそ、少し冷静に問題点を指摘してみました。

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