小売業診断の現場「高齢者市場の理解が間違っていれば、良い結果はうまれない」

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小売業診断はよくあるご依頼です。通常、市町村の商工会に依頼が行き、中小企業診断士などが行うのですが、ほとんど効果がなく、困り切った段階で口コミなどで知っていただき、レライアンスにご相談に来られる。或いはメールなどでご相談されるという例が多くあります。小売店が衰退する原因はさまざまですので現地調査や経営者様のご意見などをおうかがいし、そこで方向性が見いだせない場合は数値管理などを参考にするのですが、ここまでゆくことはあまりありません。仮に数値管理で運営の弱点を見い出せたとしても、”だから業績が悪化している”ことが分かるだけのことです。つまり例えとして野球チームがどうしても勝てないのを数値分析して、投手力は他のチームより優っているが、打撃が、特に長打力に欠けているので、あとチーム打率を5歩5厘あげて、且つ盗塁数を14増やせば、勝率は52%になる…などと言われても、相手のある中でそれを達成する為の具体的なイメージや方法、成果に繋がるアプローチを提示しなければ、そんなことは”死んだ子の歳を数える”だけのことです。

高齢者市場だと分かっているのに対処が間違っている

数カ月前、大阪の郊外にある大型団地周辺を商圏に、数店舗を経営する衣料品雑貨の小売店から企業診断の依頼があり、本社をご訪問しました。聞けば現在の社長が、引退した会長(現相談役)から行けと言われたから来たと言われ、最初から本意ではないという雰囲気を出していて、「私自身、コンサルティングになにかできるなどとは考えていませんが…」と対決姿勢を滲ませていました。この会社はこれまでも、幾つかのコンサルティング会社に相談をしているようで、相談の仕方には慣れていました。過去7年間の数値資料などを御提示され、自社の弱点などの認識も語られ、高齢者中心の商圏なので、このように対応している事例を並べられました。

大型商業施設の煽りを受けて業績が落ち込む企業は物販を中心に全国に溢れています。また現在ではネット販売も定着しているので、ますます既存の小売業の居場所はなくなっています。このような企業を口を揃えて言うのは、「若い人の需要には手は出せない。むしろ高齢者市場を狙うべきなので、品揃えや店の雰囲気など高齢者用にリニューアルしているのに、業績は益々悪化の一途をたどる」というようなことです。

市場が高齢者市場であるとは、どのようなことでしょうか。またどうすれば高齢者市場が活性化するのでしょうか。例えばニューヨークの郊外のハーレムやクイーンズを例にみると、これらの地は100年前は白人中心のセレブタウンでした(ハーレムですものね)。それが時代の変化で全米一治安の悪い、犯罪地域になり、当時は黒人やエスパニック系の貧困者や犯罪者に占領されたような地域になりました(民族が原因ではありません。貧困の差が原因だったのだと思いますが、それはここでは関係ないので割愛します)。そしてそこは今、第二のSOHOを目指して、且つての犯罪地域とは違う道を歩んでいます。

ここで大事なのは同じ地域でも、住む人が変り、お店も変わり、文化も変わることです。日本の地方都市に住むほとんどの人は「こんなところには若い人は来ない」とか「あとは衰退する一方だ」と決めつけていることです。だから個々の企業も半ば無駄だと分かっていても路線の変更ができていません。地域より前に、自身が老化してしまっているのです。

高齢者市場の対処には従来の反対の対応も肝要

そもそもこのエリアには、人を高揚させるものがなくなりました。駅前の本屋に行っても老人趣味の本が並んでいるのですが、店員が若いバイトなのでなにを聞いても分からないようです。油が滴るステーキの店はなく、うどん屋かそば屋、和食屋くらいですが、いずれもチェーン店なので高くて不味い。病院なども高齢医療か鍼灸院で、産婦人科や小児科は見事にありません。スポーツ用品店的なものは幾つかありますが、健康器具の専門店か、健康器具を並べた売り場をもったものばかりで、野球用品やサッカー道具など望むべくもありません。笑えるのは化粧品屋。ウィッグか白髪染め用品が店先を占めています。問題は、この地域でも、上記で納得できない人たちの数は決して少なくなく、彼らは休日などにわざわざ遠方の商業施設に買いにゆくのだそうで、リサーチをしても「古臭いのは嫌だけど、普通のレベルであれば、近くにあればそちらを利用したい」という答えは年ごとに増えて行きます。年長者とは年と共に身体能力は落ちるのですが、ほとんどの人は意欲が落ちない。そのような年代なのです。

それに対して、若い世代は3Y世代と言われます。「欲ない 夢ない やる気ない」。これは安全安心な社会に埋没してしまった世代の疾病のようなものですが、間違いなく現在の高齢市場とは違いますが、3Y世代が高齢者世代を考えれば、いきおい”高齢者はもっと夢も希望もない老人”をイメージしてしまうのです。

変えるべきはトータルな発想と現場スピード

社長とはこの辺りについて、話し込むことにしました。過去の数値など、これからの役には何の役にも立ちません。何らかの役には立つのでは…と思わせるのが、ビジネスコンサルなどの手です。物販で大切なのは、「消費者を知り、己を知る事」であるのは、いつの時代も変わりません。そこに小理屈が入り込むとき誤判断がうまれます。これを「トータルは発想」と仮に言うとします。その背景には「現場スピード」が不可欠です。例えばアパレルや雑貨売り場で商品別に照明の種類を換えたり、1日に於いて時間帯で、売る商品を入れ替えるのを見たことがあるでしょうか。日でできないことは月でもできません。畢竟物販とは数値理論に凝り固まることでは成功しないもので、消費者の支持を得るために発想やスピードを欠かさない必要があります。

ご依頼の小売業様には、そうした流れをまずは半分取り入れてもらい様子をみてもらいました。現状、数値の回復が見られるとの事でしたが、大きかったのは消費者の好反応だったと言います。今回第3段階目の対応として、幾つかの提案をしましたが、これはご相談が始まった時期から比べると、比較にならない変化に至っています。特に小売店や外食産業では、パソコンの画面ではなく、お客様をじっくり見ていれば、進むべき道はおのずから決まってきます。ITの恩恵はそのための管理や運営に使えても、軽々にお客様に使うものではないのです。

 

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