国連機関の局長を独占して、職権乱用を狙う中国。国際社会はこのような国を信用してはいけない

世界知的所有権機関(WIPO)の代表選挙とキューバ危機

1962年10月の国連安保理に於いて、ソビエトがキューバ―に秘密裏に武器を配備したこと対して、証拠を握ったアメリカとそれを隠し通そうとするソビエトが激しく激突しました。「キューバ危機」の大きな山場です。あくまでも論点を逸らそうとするソ連大使ワレリアン・ゾリンに対して、アメリカの国連大使アンドレイ・スティーブンソンは、隠し玉を秘めながら議論を進めていました。スティーブンソンの発言時間が終わり、追求の手が緩むと思われたとき、次の発言者であるチリの代表は、発言権をアメリカに譲り、そのあとソ連の嘘が暴かれる事態になりました。

世界知的所有権機関(WIPO)の事務局長の選挙に於いて、最有力視されていたのは中国が推す王彬穎事務次長でしたが、土壇場で米国が協力に推したシンガポール特許局長官ダレン・タン氏が逆転当選しました。これは国連の15の世界機関のうち、中国は食糧農業機関 (FAO)、国際民間航空機関 (ICAO)、 国際電気通信連合 (ITU)、工業開発機関 (UNIDO)に代表を送っているにも関わらず、今回、世界知的所有権機関 (WIPO)の代表の座を確保しようとしている状況に、アメリカのトランプ大統領が危機感を持ち、土壇場でくい止めたものでした。

このニュースに触れた時、私は68年前のこのキューバ危機を想起させました。王彬穎事務次長が、ソビエトのキューバ―への軍事配備にあたり、ダレン・タン氏はスティーブンソン米国連大使です。中国の野望にブレーキをかけたい米国でしたが、票が割れてはその効果は薄まります。その時、且つて、発言権を譲ったチリの代表のように、自国の代表候補を取り下げて、自由主義圏の結束を守る手助けをしたのが今回は日本政府の決断でした。

なぜ中国は国連機関の独占を狙うのか

国連の世界機関の代表というと国際社会の調整役ですが、個々を基準にすると、ある意味、町内会の役のような意味合いもあり、普通高い能力を持った人は自らのキャリアには役立ちませんから、成り手は多くはありません。まして各国には「たかが国連」という意識もあるので注力しないキライがありましたが、普通はパワーバランスが働くものですが、各国の関心の薄さに中国がつけ込んだとも言えます。

普通、国際機関の代表になると言う事は、自分の国の利益よりも、世界秩序を優先するのが常識です。日本や米国であれば、自国から便宜を打診されても、「自分の立場上、それはできない」と撥ねつけるのが常識です。しかし、それを自国の持つ権力と考えて、自国のために職務を捻じ曲げることが普通の国もあります。それが中国だったのでしょう。経済援助をちらつかせてアフリカ諸国や韓国などを取り込むことで、国際機関を思うままにしたいと考えたわけです。

もともと国連というのは、特に先進国では町内会くらいの意識しかありませんでしたが、それが油断となりました。まさか、その立場を自国の為だけに悪用するような国を想定しなかったのが、今回、その野望を止めたのは、トランプ大統領という、極めて政治能力の高い政府があったからこそ可能であったので、歴代の大統領では成しえなかったのかも知れません。

中国の露骨な戦略と危機意識の欠如した世界諸国の危機意識の低さ

中国は「食料」「航空」「電気通信」「工業開発」を押さえました。それに加えて最も都合の悪い「知的所有権」をコントロールするために候補を送り、それは成功するかに見えました。トランプ大統領は、自国の利益のために職権を乱用してしまう国が国連に代表を送る事に危機感を持ち、「知識財産侵害を繰り返している中国がWIPOの代表になるのは、銀行強盗が頭取になるようなもの」とまで表現して、その流れを食い止めようとし、日本もそんな米国に協力するかたちで自国の候補を取り下げて米国票に協力しました。実は国連の主要機関15のうち、先に述べたように中国が現状4の組織の代表となっていて、債務免除や経済支援でつっているアフリカ諸国の代表が3、韓国が1と、中国の息のかかった8つの組織代表が幅を効かせていて、これが9となれば世界秩序のパワーバランスは大きく乱れます。

これが杞憂ではないことの証左として、例えばWHOのテドロス・アダノム・ゲブレイェソス事務局長はエチオピア出身ですが、かれが新型コロナウィルスの対処で犯罪的判断ミスを犯したことも中国の圧力ですし、やはり新型コロナウィルス対策でも、ICAOU(国際民間航空機関)を悪用したと言われています。

それ以外にも、国際電気通信連合 (ITU)を通して、台湾をWHOから排除していることに批判的な米国の学者のツイッターのアカウントをブロックしたり、ここの趙事務局長は米国のファーウェイに対する政策についても、完全に職権を逸脱して同社を擁護するようなコメントを発表したりと、中国やその息のかかった国の代表は、職権乱用のオンパレードの状態だと言えます。

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世界知的所有権機関(WIPO)の代表選挙は米国の推すダレン・タン氏が選ばれましたが、国際諸国の問題意識の低さは問題です。やはり、平気で人権を蹂躙したり民族の浄化をするような国には、それなりの処遇をすべきでしょう。世界各国が平等であり、すべての国に同じ権利が与えられているという”幻想”は撤回しなければなりません。

歴史から復讐される中国の未来像

中国はこれまでチベットやウィグル自治区で悪行の限りを尽くしてきましたし、台湾でも同様の歴史の歪曲と人権の侵害、民族の迫害を続けてきました。また近年では中国の経済力に尻尾をふって、人権弾圧も国際組織の私物化も省みない国々が少なくなくなりました。半世紀前、私達の先人は世界に瀰漫する社会主義や共産主義の台頭と闘いました。そしていまでも香港では若い人々を中心に、自国のそんな共産党政府に戦いを挑んでいます。

元外交官の岡崎久彦氏はかつて「中国は歴史に復讐される」という本を書かれました。これまで理不尽に命を奪われた人々や、現在新型コロナウィルスで同じように命の危機にさらされている人々、人権迫害や民族浄化などで将来を奪われている人々の歴史が、いま転機を迎えているのかも知れませんし、またそうでなくてはならないでしょう。

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