前回の記事では「害鳥被害とその現状について」お話してきました。
季節に関係なく、害鳥被害と言うのは大変です。
何から手をつけたらよいのか判断基準が曖昧ですし、対費用効果も問題です。
いざ取り掛かっても、駆除がどの程度の期間効果があるかも不明な場合もありあますし、駆除の過程で地域内に騒音や悪臭など二次的に問題が発生することもあります。
いやそれ以前に駆除の手続きなども驚くほど面倒であり、それらも害鳥駆除をより複雑なイッシュー化しています。
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害鳥駆除はなにをすれば効果があるのか
エアガンによる駆除対策
典型的な例としてはエアガンで追い払う手があります。
最近害鳥対策に使うエアガンは専用のバイオBB弾を使用していて、これは生分解性プラスティック製で2~3年で土に変わるものですから、プラスティックを散乱させることはないので環境面では安心です。
しかしこれには2点の注意が必要です。
ひとつは生分解性の材料というものの定義が曖昧で「微生物によって完全に自然的物質に分解されるもの」とされていて、具体的には水やメタンや炭酸ガスなどに分解するのですが、そこまでの確認が困難であることです。
現在では主流はバイオプラスティックなどの生物資源由来のものか、石油由来のものに分かれますが、果たして個々の製品に追跡調査が可能かは問題です。
今一つ、これが重要なのですが、それではエアガンでの威嚇で効果があるのかという点です。
例えばカラスを例にとりますが、ハシブトカラスであろうとハシボソカラスであろうと、彼らがエアガンで散るのは、その瞬間だけで、ほとぼりが冷めるとすぐにも戻ってきて、いわゆるいたちごっこになるのが普通です。
しかもお寺や神社、公園などに巣くうと、そもそもエアガン自体が使用できない環境となります。
その他の害鳥には多少の効果はあるでしょうが、そもそも鳥類は威嚇に強い順応を示すので、これだけで駆除を完了するのはかなり無理があるのだと言えます。
インフレータブルや有刺用具による駆除
その他、場所によって多少効果が望めるのは、インフレータブル(空気で膨らませる)の目玉型バルーンや有刺用具などです。
前者は畑などで見かけるものですが、設置の仕方によっては効果が確認されます。
また有刺用具などでもバードレスマットのように、塀などの上部に鉄ではなくプラスティックの大きな針を並べることで害鳥が止まれないようにするのにも効果が確認されます。
しかしここにも問題はあります。
まず費用です。
ひとつひとつのパーツは安価ですが、そもそもこれらを設置する場所が基本的に高所である(長い塀の上など)為、数も必要ですし、作業費も嵩張ります。
また、いくら長い針状であっても、それ自体は柔らかいこともあり、実際はそこにカラスなどが藁などを蓄積して巣をつくってしまいます。
最初、多少効果が認められても、中期的に見ると全体的にはあまり効果が見られるようには思えないという結果になることが多いように思えます。では他に方法があるでしょうか。
考えられるのは薬品使用と罠でしょうか。
植物性液体の散布による駆除
害鳥駆除の次の一手として、“植物性液体の散布”による駆除です。
ポリブデンやエチルカルビトールなどを使用するものですが、ジェルタイプのもので忌避剤とも呼ばれているものです。
これらはジェル状ですから屋根や屋上、ベランダから手すりまで、ほぼあらゆるところに使用できます。
濃い黄色の粘着性で無臭であり、ベタベタする不快感が鳥を寄せ付けなくなります。
だいたい1年近くは持ち、耐熱性、耐候性に優れています。
しかしものによっては、無臭でないものもありますし、なによりベタベタ感で鳥を寄せ付けないというのは畢竟そこを避ければよいという意味で前出の器具の使用と変わりません。
また使える場所も、実際は限られてくるのも同様ですので、効果の面では一時的なものであると言わざるを得ないでしょう。
害鳥駆除と鳥獣保護法
そこで誰もが最後に辿り着くのが、古来からの“罠”を使った方法です。
例えばネットによる捕獲なのですが、これは手間もかかりますが、意外と効果があります。
ネットをここぞという場所に的確に設置できることが前提となるので簡単ではないですが、現実には被害が減る場合がある事は認められると言えます。
しかしここには思わぬ落とし穴があって、それが「鳥獣保護法」です。
鳥獣保護法とは
これは憶えておいて頂く必要がありますが、日本では害鳥だけでなく、害獣を含めて、それを捕獲するためにはほとんどの場合、法律があって、免許や許可申請が必要となってきます。
例えば罠で害鳥を捕獲する場合には、鳥獣保護法の壁があり、自由に獲る事はできません。
この申請には2つの方法が必要となるのですが、県や市町村に申請する「許可捕獲」、或いは「狩猟捕獲」の手続きですが、こちらはそもそも狩猟許可が必要となります。
ただ、これには例外もあってややこしいのでこれ以上は市町村か猟友会に問い合わせてみるか、レライアンスにご相談頂ければと思います。
しかし、ここで考えて頂きたいのは、そもそも害鳥とは何かという点です。
そして害鳥被害とは具体的になにを言うのかという点でしょう。
鳥が農作物を食べる? もちろんそれもあるでしょうが、それ以外にも範囲は様々です。
次にこの点について御説明しましょう。
鳥獣保護法の縛り
これまで、害鳥駆除の難しさについてお話してきましたが、本当の難しさは害鳥であるからと言って勝手に獲る事ができないことです。
そもそも“害鳥”“益鳥”というのも概念的なもので、その時と場所によって違ってきます。
かつては畑の穀物類を食い荒らすのが“害鳥”、虫などを食べるのが“益鳥”だと言われていましたが、これの矛盾は客観的に御理解頂けるものだと思います。
またかつて畑の苗を踏み倒していたトキも数が減れば天然記念物となり、これを害鳥と呼ぶことはありませんね。
ですので、気に入らないからといって害鳥と決めつけて、勝手に捕獲することは法律で厳しく取り締まられています。
これについてはかなり煩雑な内容ですので、事例別に詳しく調べるか、レライアンスにご相談頂くのがよいかと思いますが、概略だけお話ししておきます。
まず大原則として、日本に生息する鳥獣は全て「鳥獣保護法」で守られていて、“無断で捕獲する”ことはできないということです。
全てと言いましたが例外もあり、いわゆるクマネズミやドブネズミなど環境衛生維持に支障を及ぼすものは例外となっていて、これは申請なしに捕獲はできます。これはまあ当たり前には聞こえますが、そうでないケースもありますが、これは別の機会にお話し致します。
さて、捕獲申請についてですが、許可を得る手段として主として二通りがあります。ちょっと煩雑ですので、分かり易く書きます。また一部、自治体によっては例外条項になることもあります。
捕獲方法について
許可捕獲
市町村役所に許可を申請してから捕獲する方法ですが、これにも2項目の手続きが必要となります。
ひとつは原則狩猟許可が必要となる点です。
狩猟許可には罠猟、網猟の他、一種・二種の銃猟などがありますが、簡単な捕獲の場合はこの範囲外です。
役所の申請は受付先も様々で、都道府県窓口か、市町村の窓口で申請しますが、どこでも申請可能ではありません。
ただ、申請書を出しても、すぐに発効できるとは限らず、捕獲種によっては環境省への申請が必要になる場合があります。
狩猟捕獲
狩猟期間中に狩猟の可能な場所で捕獲する方法ですが、まず狩猟免許が必要となる事自体、ことの煩雑さが汲み取れると思います。こちらも説明したいのですが、地域で違いもあり、あまりに煩雑なので、別記に譲ろうと思います。
もしどうしても知りたい場合は、必要でしたらレライアンスに個別にお問い合わせ下さい。
猟友会の活躍
で、実際はこうした害鳥獣捕獲には各地の“猟友会”が登場することになります。
猟友会は狩猟者の為の公益団体ですが、九段にある大日本猟友会と各都道府県の猟友会があります。
我々からの捕獲の依頼は主としてこの各都道府県の警察と猟友会が合同で処理に当たりますが、警察は監視義務で実際の捕獲作業は猟友会が100%ボランティアで行います。
現場を見ていいても、彼らの献身的な活動には頭が下がりますが、もっと効率的な運営方法を作ることができないものかと思う事もしばしばです。
しかしこれも、ハイすぐに獲りますとは行かないケースが大変多く、例えば猟友会の方が害獣として猪や鹿を捕獲しても、それを持ち帰って下ろして食肉として販売するにはいくつものハードルがあります。
また捕獲方法にしても、現地に出向いた警察官が本部と連絡をとり合って、万が一にもけが人がでないかで1時間も小田原評定を繰り返すなども普通の風景です。
昔から多く害鳥獣に取り組んできた自治体などでは、こうしたこともないでしょうが、最近では害鳥獣が街中に出てきているだけにことはややこしくなります。
さてこれまで害鳥被害への対策のお話をしてきましたが、それを踏まえて最善の方法はないのでしょうか。
自然を維持したままで、二次被害も出さずに効果的になくして行く方法は。
それについて、次回のブログ「画期的な「放鷹術」を使った害鳥駆除」でお話し致します。