宮崎の飫肥で遭遇した、その地の名物に内包された手間と知恵

 宮崎飫肥と言えばあの小村寿太郎の出身地です。幼い時から神道の誉れ高く、学問から武道に至るまで常人を越えた能力を見せていたと言います。小村寿太郎記念館と飫肥城、飫肥城歴史資料館は観光地としてこの街を代表するものですが、この地の食文化もオリジナリティ溢れるものでした。例えば飫肥天。日向灘で採れる大衆魚を利用したもので、一見鹿児島のさつま揚げに似た外見です。しかし味付けとして味噌と黒砂糖、そして豆腐を混ぜていますので、独特の風味があって、とても手間がかかっていて特別な味わいです。

 もうひとつは厚焼き玉子。卵に酒とみりん、砂糖を入れるのですが、これを上下に置いた炭で時間をかけてじっくり熱を通して行くのだそうです。とてもしっとりした美しいものが出来上がるのですが、ここに至るまでは大変手間をかけています。

 どうでしょうか。飫肥天も厚焼き玉子も、その名前はありふれたものです。ありふれたものを使いながら、そこに手間と知恵を集約する事で、他を圧倒する品質のものを作り上げる。ここにこの町の文化を感じます。これを買って帰るといつも小村寿太郎を連想しながら、こうした天才的秀才を産み、育てた環境というものに思いを巡らせる。これこそ、旅の醍醐味ですね。

-美味礼賛
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