私たち日本人の行動は、社会は多少齟齬があっても、基本的には正確無比に稼働していて、国民はその恩恵に守られていると信じて疑いません。しかしこの無尽蔵とも言える社会への信頼感は、民族としての生存本能に重大な欠陥を内包しているとも言えます。
日本人は特に戦後、安心・安全・効率というコンセプトの下での国体を完成する中で、情報感覚に疎くなり、結果ポリアンナ症候群(問題に直面しても、その中に含まれる僅かな良い部分だけを見て自己満足的安心状態に落ち込み、問題そのものの解決に意識が回らない事)に安住してしまった感があるのが、そのひとつの現象です。”日本は諸外国に比べて、効率的で安定した社会を構築したのだから、ここに身を浸しておけば安心だ”。この妄信が国民生活を脅かし、国を崩壊させるような私達の生存権、或いは生命権に関わる危機に気づかない愚を犯しているのであるとすれば、ことは看過できないものになります。
韓国で次々起こる原発事故。でも日本人は誰も知らない
先日NHKのニュースで”日本から韓国への旅行者数が減っている”という報道がありました。報道は”韓国にはまだまだ知らない良いところがある”で締めくくられていました。しかし”韓国では長年にわたって福島原発と同様の原発事故が相次いで起きているにも関わらず、詳細は公表はされていない”というような重大事については、この国営放送局だけでなく、日本のメディアで触れられることはありません。
現在はネット情報があり、いくら代表的なメディアがなんらかの意図を持って情報操作を行おうとしても、ある程度漏れてくるだけでなく、キュレーションメディアや検索機能で、かなり正確に、情報を収集することができますので「韓国 原発事故」あたりで検索すれば、多くの情報を得ることができます。その時、日本人はみな驚くような原発事故の多発に”テレビや新聞で聞いた覚えがないけど。本当?”というような反応を示しますが、大量に漏れてくるのは”情報”ではなく”放射能”なのですから、ことは重大です。
2018年6月、韓国原慶尚北道慶州にある月城原子力発電所から、冷却材の重水3630kgが漏れて、作業中の労働者29人が被爆しました。発電所の発表では原因は”現場作業者のミスで冷却材バルブが開いてしまった”ということですが、原発のことを少しでも知っている人は分かるでしょうが、冷却材バルブなどというものは、ちょっと間違って蛇口を開いてしまいましたというようなものではありません。また続いて、”漏れた重水はすぐに回収された”、”29人の被爆量は平均0.39~2.5ミリシーベルトで、年間の許容量20ミリシーベルトより低い”との発表がありました。そもそもどうしたら、3630kgの流れ出た重水を即座に回収できるのでしょうか。また”年間の許容量の~”とか”直ちに命に〜”というのは、福島原発事故の時もよく使われていたフレーズですが、それがあまりあてにならないことは、いま私たちは知っています。
しかしことの問題はそこにはありません。事故の処理は韓国が自国でおこなうべきことですが、私達日本人が考えねばならないことは、溢れ出た重水が”その後、どのような影響を我が国に及ぼすのか”という一点です。事故の場所が慶尚北道慶州にある月城原子力発電所ですから、そこから対馬までは110キロ余り、(直線距離で東京-富士市、大阪梅田-伊勢)、福岡まで250キロ。福島原発から東京までが270キロと考えれば海を挟んだだけの現状がどれほど危険か想像がつくと言うものです。また海流の影響を受けると想定すると、いずれは日本海の秋田や新潟辺りに辿り着くことも想定され、以下に危険な事かが推測されます。
風評被害が起こると言うが…
メディア報道については、以前関係の知人に聞いたことがあります。彼は社内では、情報が不確かな段階で、その手の情報や発言を報道すると風評被害が起こるからだと言うのですが、「不確かな段階で思惑報道などメディアのお得意の手法だろう。やはり会社として、原発促進に反対する報道、韓国に対する非難に繋がる報道などはある種のタブー化されているだろう」と指摘には、「分かってくれよ」というような答えが返ってきます。当然、メディアには、様々な大きな力や意思が働いていて、本当に平等、公平な報道などされているとは思いませんが、私たち国民がそれを忖度する必要はなく、現実に対馬で生活しているかたや広く西日本の人々は、PM2.5だけでなく、それよりももっと深刻な放射能被害に脅かされ続けているのだとしたら、そしてそれが正しく伝わらないのだとしたら、正しい怒りを持って抗議すべきであることは当然の権利と言えます。
このブログでは再三言っていることですが、このような事態になっても日本人は我慢強い(?)面を持っていて、それが人災で自分に災難が降りかかっても、自分に何ができると自問し、諦めてしまう傾向があるようです。
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さて下の図は韓国・古里原発3号機の使用済み核燃料貯蔵プールで火災、爆発が起きた時の放射性物質セシウム137の拡散状況に関するシミュレーション結果ですが、細かい解説など不要でしょう。ただ下図の赤い帯は日本の国土と海域に落ち、蓄積され、そして消えることはないのです。今も韓国国内では日本海沿いに次々とこうした不良原発を作り続けていて、定期的に事故を起こしています。韓国の原発の多くが全羅南道(南部海沿い地域)に造られるのかという点を含めて、日本国民にとって重要な報道は一向に国民の耳には届いてきません。
そしてもっと脅威なのは、これはまだ多少民主的な韓国で起きた事故だから情報が入りますが、中国のように、事故を起こした電車車両を、証拠を消す為にさっさと地中に埋めてしまうような国があり、そこが将来的に数千か所の原発の建造を目指しているわけですから、事故の情報は勿論、原発の場所の情報などは当然開示させるべきです。少なくとも事故を起こしても、実際の影響は風に乗って日本列島に行き着くのだからなどという発想が中国や韓国にあるのであれば、私たちは毅然とした姿勢で向かうべきです。日本列島は原発事故の棄て場所ではありません。
自分達の問題に対して、正面から立ち向かう信念を持つ
アジア大陸を旅していると、レストランの店員が笑顔なのは日本とタイだけだという話があります。原因は他の民族に国土を侵されたことがないからだということで、これは決して悪いことではなく、そのような歴史を持っていること自体は幸せなことかも知れません。しかし、笑顔で接することと、気骨を失って愛想笑いで誤魔化しているのは別のことです。強い力に踏みつけられた時、大きな力に押さえつけられた時、それでも相手が大丈夫?と笑顔で接してきたら、微笑みを返してしまう。或いは悪いのはお前やお前の同胞だと言われたら、自分で考えもせずに受け売りをして行動する。そんな人間になりかけてはいないでしょうか。感情的にならなくてもよいでしょう。お互いの立場も尊重しなければならない時もあるかも知れません。しかしそれが看過できない問題であるのなら、知らない顔をして先送りするのではなく、しっかりと指をさして問題解決を迫るというのが当たり前の姿勢ではないでしょうか。常に愛想笑いをしてその場を凌ぐという姿勢は、もう終わりにしなければなりません。
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世界は原発事故で溢れている。いつまで続くのか、原発の偽りの安全神話創作と壊滅的事故の連鎖
2011年3月の福島第一原発のメルトダウンから8年を迎えます。日本国内では、その他の多くの犯罪や災害と同じように“あの惨事”を一過性の事故という位置づけが定着し始め、「放射能被害」とか「周辺地域の農産 …
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これほど重要な原発事故を報道しない国営放送や他のメディアには大きな不信を感じます。しかしそれに対して毅然とした態度を示さなければなりません。こんな事なかれな国民性だからと、相手も足元を見ています。それが例えば、年金問題も理屈を捏ねて諦めさせれれば済むとか、公務員天国、既得権益者だけが破格の優遇を受ける社会体制などが維持、正当化される温床なのでしょう。それでは誤った社会意識が是正される訳がありません。最初にあげた”安心・安全・効率”以外の、”個が自立できる新しい社会の価値観(楽しさや、官僚の権威の低い社会体制など)”の確立を推進しなければ、日本は新たな時代を築けず、次の100年の深く不毛な眠りにつく事になるのでしょう。
追記事 産経新聞 2019年5月21日の記事
韓国原子力安全委員会は21日までに、南西部の全羅南道・霊光にあるハンビッ原子力発電所1号機で原子炉の熱出力が制限値を超えて急上昇したのに、即時停止を定めた運営指針に反し、運営会社の韓国水力原子力(韓水原)が停止させたのは異常感知から約11時間半後だったと発表した。放射性物質漏えいはなかったが、同委員会は重大事故につながる恐れがあったとみている。
同委員会は安全措置不足と原子力安全法違反を確認したとして1号機の使用停止を命令。委員会職員に捜査権を持たせた特別司法警察官を投入し原因や管理態勢を調査している。原発事故に詳しい松山大(愛媛県)の張貞旭教授は「深刻な状態に陥りかねず、緊急停止させるべきだった。韓水原のずさんな運営や安全軽視の姿勢に問題がある」と指摘した。
韓国の原発は全て韓水原が運営。商業用の24基中、ハンビッの6基以外の18基は日本海側にあり、事故が起きれば日本に被害が及ぶ可能性もある。韓国メディアによると、特別司法警察官の投入は1978年に原発の商業運転が始まって以降初めて。
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繰り返される原発事故 人類に原子力発電をする資格はあるか
このページの目次1、くすぶり続ける“FUKUSHIMA”。世界は日本を見ている2、危機を加える中国、韓国の原発事故リスクは日本を直撃韓国が危惧する中国の原発事故の影響原発事故も不安な韓国の原発事情3、 …
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