「レミゼラブル」 淀屋橋を揺るがしたユーゴ原作のミュージカルの大阪公演 (フェスティバルホール)

9月2日から、大阪フェスティバルホールで行われている、東宝ミュージカル「レ・ミゼラブル」。 3日の昼の部で観劇してきました。私はこのミュージカルを日本で観たのは初めてで、大変新鮮な印象を受けました。日本でのミュージカル、レ・ミゼラブル自体は1987年が初演で最初の公演では加賀丈史さんや滝田栄さんが主役を張っていたそうで、その中でマリウスが野口五郎さんであったり、まだ人気女優になったばかりの斉藤由貴さんが登用されていたそうです。そう言えば、当時何となく聞いて、人気の人を揃えた偏見を持ったのを思い出しました。ただマダム・テラルディエを鳳蘭さんが演じていたりしていたのを聞くと、人気だけでは選ばれない世界だったのだと、今公演を観て痛感しました。

前半はさっと流して、後半に重点を置き山場に流れ込む演出

公演ごとの演出についての詳細は分かりませんが、海外で公演されているものとは所謂演出や解釈は違っていたように思えます。特に冒頭からジャンバルジャンが市長となったあと、コゼットを引き取るまでの辺りがスピーディーに演じられていて、物語を全く知らない方であれば少し掴みにくいかもとは思いましたが、もとより膨大な物語ですから、致し方ないのかも知れません。


私は個人的に(多分多くの方もそうでしょうが)銀食器を盗んで逃げたジャンバルジャンがつかまり、司教の前に連行されてくる件が好きですが、ここもあっさりと描かれていましたが、演出の妙なのか、しっかり涙腺が緩んでしまいました。そう考えると、さらっと描いていたと思しき前半部分でも、何度も涙腺の緩む場面があって、やはりこれはミュージカル特有の演出なのでしょう。

チェンジオブペースで和んだ後、後半は一気にクライマックスになだれ込む

マダム・テラルディエが出て来る安酒場のシーンは、オリジナルもそうですがとても楽しいものです。普通この手のストーリーで、チェンジペース的なシーンが入ると、ちょっとボルテージが下がってもよさそうなのですが、音楽も演技も愉快で練られているので、感情移入に事欠かない状況で、今回マダムを演じていた森公子さんのアドリブ(?)と思しき場面では爆笑してしまい、会場も大盛り上がりでした。

しかしやはりバリケードのエピソード(中休みのあと後半)となると、会場もすっかり“ハマった”状態ですから満場立錐の余地のないような緊張が続きます。ガブローシュの撃たれるシーンや、エポニーヌが寂しさを歌うソロ、マリウスの手の中で亡くなるところなどは、結構会場でもすすり泣くような“音”が聞こえてきました。
それにやっぱりもう一人の主人公と言えるジャベール警部も存在感抜群で、橋から身を投げる場面での拍手の強さは理解出来ました。
私にはこの公演を評価する資格など毛頭ありませんが、若い頃、文学としてのユーゴを楽しみ、映画や舞台を鑑賞してきた一ファンとしては、充分に満足行く内容で、“いやー。日本のミュージカルも凄いね”と同行者に何度も言うほどのものでした。

確かにチケット料金は値頃ではないかも知れませんが、それも幕が開くまで。全編に亘る歌とお芝居を堪能するだけでなく、舞台の前のボックスで終始演奏をしていた楽団。この演奏だけでも聞く価値はあります。全編に亘って全ての音楽に音を合わせていながら、おそらく観衆は皆、舞台にくぎ付けになっているのですが、かなりの演奏力だと感嘆しましたし、全編観終わった後にチケット料金を考える人は皆無ではないかと思います。

細やかな問題点? チケットの確保方法と透明性は改善の余地はある?

公演にはとても満足しましたが、ちょっと気になる点もあります。それはやはりチケットについてです。今回も梅田芸術劇場の会員として事前販売を申し込みましたが確保はできませんでした。それでも会員用の2次申し込みもありましたが、行ける日時が限られている身ではこれも中々難しく、数時間購入サイトを何度もチェックしてようやく席を確保しましたが、2階席の奥が精一杯の状態でしたし、席の選択は全くできない状態で、もう少し何とかならないのかとは思います。
もちろん希望者が多いのだから仕方はないのは分かりますが、それでも当日入り口に団体鑑賞と思しき方々の案内板があるのを見ると、且つて大口顧客を優先して業績を落とした運送業界を思い出します。その点、劇団四季のチケット販売では、自分で座席は選べた分、納得はできました。

新しくなったフェスティバルホールについてですが、通常のコンサートや演奏会では気が付かなかったのですが、演者の声が聞き取り難いところがありました。特に出だしの部分でそれが顕著で、後半はそうでもなくなったようい思えます。このホールの反響は素晴らしいの一語に尽きるのですが、もしかしたら客席に向いていない方向、特に下向きの声は籠るのではないかと思います。後半に籠りがなくなったのは、演者が気をつけて客席に顔を向けていたからではないかと思います。

それとこれは公演とは関係ありませんが、以前から思うのはシートの事や座席の前の空間です。人によって違うのは勿論ですが、例えばシネコンの座席のシートはゆったりしていて快適です。また前との間隔もゆとりがあって、観劇の時や人が前を通るときにも余裕が持てます。何か意味があるのかなとも思いますが、映画館でできるのであればとも思います。

とは言え「レ・ミゼラブル公演」自体は、とても満足の行く舞台でした。もう一度行きたいのは勿論、他の公演も嗜みたいと思う全ての観劇者達と共に帰途につきました。素晴らしい公演でした。

-旅・芸術・文化
-

© 2024 明日を読む