レライアンスの仕事②  「決まらぬ後継者」

世の中には毎日厳しい仕事をこなしていながら収益に繋がらないこともある反面、大したこともしていないのに(失礼)、大きな収益をあげている会社もあります。ここではその後者についてです。外国の医療機器の総代理店であるその企業の社長は、もうすっかり白髪でありながら“若い頃はモテたろう”と推測できるような雰囲気を持たれた方でした。“ちょっと難しいケースだから”と知り合いの方のご紹介でお会いしました。
指定されたのは、かなり小粋なバーでしたが、先方もこちらに任せてよいか、いろいろ探られている感じはありました。
「で、ご相談内容は?」。こちらが辛抱できずに切り出したのは1時間程してからでした。

「判断ができないので…」。「で、何なのですか?」

ご相談の内容はひとつ「後継者が決まらない」ことでした。この会社の扱う医療機器は日本ではこの会社が独占販売権を得ていることもあって、全国に機器を販売しています。大した難しい操作もないのですが、依頼があれば現地に直接持参して説明するので、人件費も加味すればそうとうな金額となり、メンテナンスも含めればまさに“左団扇”な会社のようでした。あとでホームページを見ても、大した内容ではないのにお金は充分かかっているようなものでしたので、納得はできます。氏には2人の息子(50前後)がおりますが、長年営業を全て取りまとめている、昔で言えば“大番頭”的なスタッフもいます。今度、社長を退き代を譲ろうと考えたそうですが、さて誰に継がせばよいのか判断ができないので…と言われます。

あまりのスロー対応で若干“いらち”状態だったこともありますが、「で、何なのですか?」と
問い直します。つまり悩みは分かりました。しかし私どもに“何を”“どこまで”ご希望されるかが重要です。判断できないから自分で判断できるような精神状態にしてほしいのか、或いは判断できる材料を揃えて提示してほしいのか、具体的な指示がなければ始まりません。
それを言うとしばらく考えられたあと「自分には経営能力はない。偶然販売権を手に入れただけなので、次期社長を決めてほしい。そしてその新社長が困らないように、それなりの知恵や人柄をつけてほしい」。

それが成功の秘訣かと気づきはしたが、与えられた難題の壁は高い

驚くような内容です。どれだけ責任重要か。本当に社長の決定を外部に委託するのだろうか。そこまでの信用を得る為には、私たちは何をすればよいのだろうか。そう考え、そのまま尋ねました。社長は「いや、あなたでも良いです。決めて貰えれば、あとは社長として恥ずかしくないように教育してやってくれれば」とさらっと言われる。なるほど、これが社長が意識の有無に関わらず、この会社の成功の秘訣かもと感じましたが、はて請けてよいものかとも考えました。

その後、社にお邪魔して社風を観察したり、候補者3名に個別に、或いは同時にお話を聞いたりする過程を経て半年後に1名に絞り、社長にご連絡しました。半年もかかったのは、やはりひとつの会社の社長を選ぶことの責任の重さがあったからです。仕事の内容と、今後の展望を前提として、果たして誰が適任か。まただれかを選んだとして、それでも他のメンバーとの軋轢などは起こらないかなどあらゆる方面から検討を重ねました。

しかしその後、社長は新人事を一向に発表しません。しかも別件として私たちに定期的に社に顔を出してほしいと言われます。そしてほぼ1年が経過した段階で、こちらの提案した人事案が採用されました。最初、就任後に帝王学を教えてほしいと言われていたと思っていたのは、そうではなく人間として重厚な“なにか”を仕込んでくれればよいということでした。“なにか”と言われても、要は社長としての“なにか”を身につけさせてくれということで、それはそれで大変な難題ではないかと思いますが、長いスパンで取り組んでいるところです。

さてこれについては、いつ仕事が終了するのか、何年もかかるのか。それとも数か月なのか。その辺りを聞きたくても、前社長は一線を退き、盛んに海外に旅行に行かれる毎日を送っておられますが。

 

-レライアンスのビジネス
-

© 2024 明日を読む