レライアンスの仕事④ 社員が”敵”になる? 増大する内部崩壊企業

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ビジネスコンサルティングには必ずと言って経営相談や経営診断の項目がありますが、これが結構曲者です。なぜかと言えば依頼者は相談や診断をしてもらえれば何らかの解決策が提示されることを期待するのに対して、ビジコン側がするのはあくまで「相談」であり「診断」なのです。ですからその先の解決策は、提示しない。今日初めて会った企業ですから2~3度の面談くらいでは提示などできないのが現実です。相談する側はお金を払っているのだから解決の道筋を示してほしいと思っているのですが、そもそもそんな簡単に道が開けるわけはありません。
ビジコン側もそこは慣れていて、現実の数字を駆使して現状を説明して、ここの数値をこのようい改善すれば良いのですと理屈を捏ねて、その期待に応える。でも数字を弄るなどということは“現実には具体的行動に置き換えられない”ものですから、当然うまく行かない。かくして依頼者は“ビジコン・サーフィン”を繰り返すことになります。

代替テキスト

外からは見えない企業の内部崩壊にどう向き合うか

今回見えられた方はまさにそうした、“経営者シンドローム”に陥っているとすぐに判断できるA氏でした。最初から疑念の眼差しでこちらを観察されているようで、やたら「あまりコンサルティングは信用していないのですが…」と繰り返される。それに事業のことになると威勢を張るような表現を使われる。「それならば、ご相談の必要はありませんね」とちょっと皮肉でも言ってやりたくなるのを押さえて応対します。

結局胸襟を開いて話ができるのに数度の話し合いの機会が必要になりました。その時点となって初めて本音でご相談をされるようになりました。普通はそこまで行きません。人が本音を出すと言うのは大変な“前置き”です。
いろいろな経緯を経ましたが、畢竟ご相談の内容は自分が経営している製造業の会社の業績の悪化の原因と対策でした。まあ、経営相談のほとんどがこうしたジャンルには違いないですが。

しかしここからが大変です。先に述べたように数字を弄って、役に立たない小理屈を捏ねるのは簡単ですが、本気で解決に持って行くには手間も暇もかかります。場合によっては(と言うより必ず必要なことですが)社内にへばり付いて業務の流れや人間関係、社員ひとりひとりの人となりなどから、取引先との関係は業界の現状や、その会社の創業からの歴史まで精査しなければならないこともありますので、費用の見積もりも難しく、時間もかかります。何をどこまで追求しなければならないかも現段階では不明ですし、費用もおそらくは想定以上かかることは間違いはありません。しかしそこまでできれば多くの場合、現状からの脱皮ができ、もう“ビジコン・サーフィン”の必要がなくなるかも知れませんし、すでに回復不可能の領域なのかも知れません。そのことを納得していただくことが普通は至難の業なのです。

静かに進む”組織の分裂”

しかし、A氏の会社の場合は、かなり早い段階で原因らしきものの足掛かりも判明しましたので、原因の仮説までは比較的容易でした。しかし問題はその解決策。いつものことですが、必ずそこには人間の感情が関わって来ることもあり、かなり大変なものとなりました。

特に製造業などの場合に組織分裂に至るプロセスが判断し易い場合があります。それは現場が且つて高い技術力で伸びた会社に顕著な例でした。この会社の場合も且つて(30年前後以前)その技術が評価され、外国製品が流入した時もしっかり乗り越えた経歴があります。その山を越えた段階で現社長が代を注ぐ形で就任しました。最初の数年は滞りなく業績も安定しているように見えましたが、徐々に現状の環境の変化も進み下降線を歩みだしたようです。比較的よくある例です。

現場と経営陣の間では、品質とコストの議論が常に続いていた時期があることも分かりました。
現場の責任者は誠実そうで、責任感も高い好人物です。いろいろなことにも柔軟な対応ができそうに見えました。しかしこと製品のクオリティとなると、職人気質が顔を出します。自分達の技術は特殊性を持っている。細部へのこだわりがあったからこそ海外からの競争にもびくともしなかったと豪語される。それだけに現社長はいつもコストの事ばかり言って、所詮2代目に過ぎないというものです。

その場でその本人には言いませんでしたが、海外との競争に負けなかったのは、高い技術も一因でしたが、それが全てではありません。時期的なもの、取引先環境など様々な要因が加味したものです。中には経営陣の努力で得た要因もあったでしょう。しかし時と共に、忘れ去られたものはすべて些末なものと判断され“技術的優位論”だけだ残っているのです。
そもそも細部にこだわる特殊性というのは、絶対にコストに優るものではありません。通常、同コストのものであればと言うケースも少なくなく、本来は一定の範囲のコストの中で技術が優れていたにすぎないケースがほとんどです。それでないと、今テレビ番組で日本の職人が絶賛される企画が多い中で、“この技術をもっているのは、もう○○さん1人だけになりました”現象は説明が付かないでしょう。

こうした現場の成功体験が、環境が変わっても事実関係の精査することなしに瀰漫することで、全体を脅かす存在になってしまいます。この経営と現場の位置関係は、経営能力の必要のないような時代適合的な成功業種も同様で、これは現場業績の絶対的位置ではなく、経営との距離の問題であることが、また解決への手掛かりをぼやかす結果にも繋がってはいます。

しかしもし現状がそれだけだとすればまだ対応は比較的容易です。しかしここには経営者側のそれに対する動きも、意識の有無に関係なく行われることで、ことを難しくしています。それは経営者側がそうした現場の技術至上主義に“数値管理”など違った次元で対応するために軋轢がますます複雑化することです。元々“コスト”対“品質”であったのが、環境論や感情論にまでまたがる事になるのです。でも実はこの対局は経営者側にも現場側にも同じ理論があるためで、ある意味“同工異曲”から“異工異曲”になってしまったものです。

崩壊を立て直す為のいくつかの処方箋

さて問題はどうすればこのこじれた関係が修復され、もとの関係に戻る事ができるのかですが、
結論から言うと、“もとに”戻る事はありません。あるとしたら一皮剥けた強固な関係も期待
できるかも知れません。しかしその為には荒療治が必要となってきます。どちらかが、或いはど
ちらもが認識やプライドを変えたり、学ぶ必要に迫られることになります。具体的な対策として
は幾つかのアプローチがあります。

例えば勉強会などで地道に説得と納得を繰り返す方法があります。ここにはお互いがある程度プ
ライドを捨てることになりますし、また現場などの専門職などサラリーマンは自分の役割以外の
勉強や新しい情報を咀嚼することが苦手なので中途半端に終わる事が多いと言えます。

次によく使われるのが人事を弄ることです。例えば現場でリーダー格の人物を経営陣とか、部署のトップに入れ替えるなどですが、タイミングを失している場合が多く、効果には疑問があります。しかもこれには大きなリスクも付きまといます。わざとらしい人事であれば、その主旨はすぐ見透かされてしまいます。また当の本人にとっても過大なプレッシャーになるため、現場の同情を得ることになれば、決定的な反対勢力に変わる可能性が高まります。

そのほか対象の部署の上に女性の幹部を配置するとか、少し古い表現ですがCI(company
identity)を強化するなどして知恵を称賛する社風を築くなどもありますが、一長一短がありま
す。

割と効果があるのが、時間や予算の少ない若手や女性中心の新プロジェクトを立ち上げるという
ことですが、環境が整えば試してみても良いだろうと思います。
しかしこれらは個々の会社によって処方箋も結果も違ってきます。充分に現場を検証した上で
“正しく”処方することが重要になってきます。

実はA氏の場合は上記とは違う対処をしました。若干テクニック的なこともあり、具体的なこ
とを書くことには差しさわりがあるのでここでは割愛しますが、それほど企業対策とは複雑で
対処は難しいものなのです。

労使の間に溝ができるのは実は2~3年で起きる現象ではありません。原因を追究すると、そ
の起因は10年や20年前に遡ることが普通であることがほとんどではないかと思います。それ
だけに最初からそれなりの覚悟を持って解決を図る必要があるのです。

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