新幹線3人殺傷事件は悲惨だが、東海道新幹線の体質こそ問題視されるべき

新幹線での3人の殺傷事件は悲惨なことですが、それに対する”自称識者”の意見は輪を書いて悲惨だと言えます。ある方は「どうすればこのようなことから逃れられるでしょうか」と聞かれて「新幹線には前と後ろに非常ボタンがあるから、それを押してください」と。これは漫才かとずっこけたのは私だけではないでしょう。現実感どころか危機感を全く感じないご意見ですし、これをそのまま流すメディアにも驚きです。

問題は東海道新幹線の企業体質にある

以前、私はこのブログで東海道新幹線の企業体質の異常性について述べました。そしてそれはまたここでも繰り返すことになりそうです。例えば「運賃の高過ぎる問題」です。新幹線は1本の路線で2000億を越える利益をあげています。まずこれは法律で禁じている独占利益に抵触するのではというのが一点。  しかし百歩譲ってそれは仕方ないと言った場合、ではこの酷く傷んだ車両はなんだという「古車両放置問題」があります。新幹線は最新線ではありません。先頃も金属疲労が原因の大事故の一歩手前というのがありましたが、その後も多くの車両が同じ金属疲労状態にも関わらず「徐々に入れ替えて行きます」?   その間、いつ破壊され大事故に繋がるかもしれない新幹線が東海道を行ったり来たりしているのですから、常識では考えられない対応です。JR西日本の事故では経営者を叩きまくったメディアも、これほど重大なイッシューについては口を噤んだまま。まるで東京電力に怯えているのと同じような構図だと言えます。

利用者無視のサービス体制と商業施設だけの設備投資で駅舎もホームも一昔前の状態

もっと問題なのは東海道新幹線がその利益の追求ばかりに目を奪われ、商業施設ばかり作りまくっていながら、利用者へのサービスはほったらかしの現実です。例えば東北新幹線や北陸新幹線に乗ってみれば一目瞭然ですが、ホームや改札、トイレなどどれを見ても東海道新幹線のレベルの低さは突出しています。まして九州や諸外国を走っている電車と比較など無意味なほど劣っているのは、新幹線が昔からあるからでは理解できないことです。

例えば、あれほど評判の悪かった大阪市営地下鉄は民営化の前に利用者からの”冷たい視線”に配慮して、梅田や天王寺などごく一部の駅だけではありますがトイレを今風のものに改装しましたが、それだけでも評価はされました(ほかとの差が余計目立つようになったという意見もありましたが)。それほど、鉄道各社は利用者に対してホスピタリティというものを真剣に考えています。しかし、放っておいても膨大な収入を独占している東海道新幹線には、利用者の安全や利便性など全く眼中にはないようです。

東海道新幹線にはかつて食堂車というのがありましたが、高い、不味い、遅いで評判が悪く、廃止されましたが常識で考えて、これほどビジネスなどで毎日多くの人々が利用するのだから、普通の感覚であればコンパートメント的な空間ができれば、ビジネスユースなどにも利用できます。だいたいなぜ新幹線は2人掛けと3人掛け車両なのか。あの狭苦しい空間に押し込められているから今回のような犯罪も起きるというものです。先の非常ボタンも、いくら押したとしても逃げ惑う乗客の中で誰が現場に行けるのでしょうか。

手荷物検査だけでなく、鉄道警察官なども常識だ

今回の事件を受けて手荷物検査をという声もありますが、これに対しては「非現実的だ」と一蹴しているようです。3年前にガソリンを撒いて火をつけた男がいても、車輪が金属疲労でいつ破壊するか分からなくても、「非現実的」で済ます体質は一体なんなのでしょうか。おそらく「利益追求に忙しいのだから、お金がかかる手荷物検査などできない」というのが本音なのでしょうが、メディアが報道しないことをよいことに胡坐をかいているのはどうもいただけません。事実全国のJRでは、常識では考えられないような犯罪(車両内での強姦事件や暴力事件)が多発しています。手荷物検査だけでなく、鉄道警察官などの導入も当たり前ですし、それをするだけの充分な収益は独占利益体制で充分稼いでいます。

一番の問題は国民が新幹線に甘いことにあるでしょう。新幹線は世界最新だと信じてやまないのではないでしょうか。海外誘致で新幹線が負けるのは、賄賂だけが原因だと信じているのではないでしょうか。私は新幹線に乗る度に、そのサービスレベルの低さを再確認しています。世界は、というより日本国内でも、これほど進歩のない路線は少ない。そしてその理由は、独占利益をあげても、サービスが悪くても、なんの声も上げない利用者の意識の低さにあるのかも知れません。

 

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