麻生元外相が中東外交に投じた一石が、時を経て二千年の歴史を変えるかも知れない

イスラエルとパレスティナはこれまで相互に殺戮の歴史を繰り返してきましたが、先日、BBCを見ていると、近年ある種の変化がみられるのだそうです。そこで紹介されていた実例は、イスラエルのIT企業で、この両国(地域?)のひとが同じ会社で席を並べて会社の利益のために仕事をしているのだそうです。話を聞かれたパレスティナの社員は「自分の仕事で会社が利益をあげると、それがパレスティナ人の命を奪うのに使われるのではと感じることがある」と言っていましたが。確かに彼の立場でマイクを向けられれば、そう答えるしかないのでしょう。また、中東和平自体、あまりに長く、あまりに多くの人命を奪ってきましたから、このような動きは微細たるものなのでしょうが、このような微動が大きな潮流に変わる例を、私たちはまた多く経験してきています。

ニュースではイスラエルではネタニアフ首相が強行姿勢を強めているという報道もあります。これも彼の立場で多少なりとも”譲歩”と取られるような言動があれば、それは両者にとっても良い結果には繋がりませんので、そのような態度をするのでしょうが、こうした小さな胎動が、力を持ち始めているのかも知れません

10年以上前に中東和平に画期的な方向性を与えた麻生外相

この報道を見て思い出したのは、いまから10年以上前に、それまでの中東和平の流れに一大転換を意識つける提案がでたことです。提案者は日本の当時の外務大臣だった麻生太郎氏(首相になるまえでしたが)で、その提案内容の発想と行動力は麻生氏のスケールの大きな発想と、中東問題を本気で解決に導こうとする意志を感じたものでした。

2007年、日本政府はイスラエルとパレスチナ両国と日本、ヨルダンを交えた4者会談を呼びかけ、和解を提唱しましたが、その前提条件は「一生懸命働くこと」でした。「まずは農業から手をつけたらどうか」から始めて、両国の国民が、明日のためにしばらく紛争を棚上げにしてでも、働いて、お金を儲けようと呼びかけた麻生氏の発想は斬新ではありましたが、それ以上に心を打つものがあったように思います。

中東和平は世界中の諸国の利益にも大きく影響しますから、なにかしら自国(この場合は日本ですが)のメリットが臭ってくるものなのですが、麻生氏の提案にはそのようなものは感じられなかったため、両国もそこに信頼感を持ったのだと思います。「私達はこれまで、何度かテーブルについたが、お金儲けのことで話し合ったことはなかった」と発言したイスラエルの代表の真意はパレスティナ側に”本気で平和を話し合いましょう”だったのでしょう。麻生氏は、この発言を受けて「ユダヤ人がお金儲けの話以外になんの話をするのか」と発言したことで、緊張場に爽やかな風が吹いたと感じる人は少なくなかったと思います。中東和平の解決の道程は、これだけで解決するものではありませんが、いつの日か”今日この日があるのは、あの提案があったからだ”と言う日が来るのかも知れません。

そんな麻生氏の国際情勢を判断する発想力は、その後、同氏の書いた「自由と繁栄の弧」でも遺憾なく発揮されました。これは世界の安定のためにアジアでは中国の周辺に位置する諸国の経済的、思想的な自由を担保することで真の繁栄を築こうとするもので、誠にスケールの大きな提案で、政治家としての器の大きさを感じたものです。

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正しく知り、正しい判断をが原則

あの頃、首相になった麻生氏が漢字を読み間違えることがあり、野党に下った石井一議員が国会の代表質問で、漢字を書いたプレートを見せて「これを読んでください」と侮辱するのを楽しんでいるようなことがありましたが、私達有権者もこの議員のように品性を欠いてはいけません。

私は麻生氏を支持しているわけではありません。が、しかし政治家の業績を正しく知り、それに基づいて正しく判断することは心がけています。それは、政治自体が私達を代表した議員が、国家国民のために、正しい法律を作るという仕組みのもので、それだけに有権者の判断の間違いは、国の存亡に関わってくると考えるからです。

それには、ただ好き嫌いや、メディアの報道を受け売りするのではなく、厳しく、また正しい姿勢で政治家の仕事を判断しなければなりません。麻生現財務大臣については、財務省の不祥事問題の対応などで、感心できない対応がありましたが、これまでの氏の実績をみると、スケールの小さい仕事なのかも知れません。先に述べたように、中東和平の変化は様々な国の思惑があるので一筋縄ではゆきませんが、かつての麻生氏が投じた一石の波紋が、小さな意識の芽生えを生み、10年以上の熟成を経て、細やかなムーブメントを起こしているのであることは言を俟たないと言えるでしょう。いま、そこには既に麻生氏の手垢は残っていませんが、解決困難な問題を解決に導くのは長期視点と、無私の強い意思こそが大切なのだと言う事を感じさせてくれる一報でした。

 

 

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