”働き方改革”や”定年延長・再雇用”は”まやかし”?停年退職を迎えられない”蜥蜴の尻尾切り族”の急増。

レライアンスでは「55歳以上のライフ設計」を請け負っています。その中で急増しているのが、定年退職を迎えられない人々からの相談です。                      且つては彼らのような人達を”ケツを割った人”と表現して、我慢できなかった人とか忠誠心に欠ける人と解釈したものですが、会社自体の役割や中身が変わってしまった現在、そうした人々から話を伺っていると、全く違った背景が見えてきます。

彼らは会社を辞めたいわけではありません。むしろ会社の苦しい時期も乗り越えてきた忠誠心に溢れた人たちがほとんどです。ところが会社側の業績が落ちてしまい、収入の激減が長期にわたったため、生活の継続が不可能となってしまったため、一旦退職金でリセットせざるを得なくなってしまっているのが原因です。

そもそも現在の55歳くらいのサラリーマン世代の給与構造は、大きく分けて学校を卒業して就職。そのあと20年は働きよりも大幅に少ない給与体系です。まだ家庭も持っていなかったり、持っていたとしてもまだ子供の年が低い為、大きな出費にならないからです。そして残りの定年までの20年は、子供の進学や生活の変化で出費が大いに増えるため、実際の仕事以上の給与分配があります。やがて定年となれば年金と退職金がダブルで入ってくるから、60歳以降は第二の人生を悠々自適で送れるというシナリオで社会にでてきました。

現在は、このようなシナリオは絵空事になっていますが、それでもこの年代は少なくとも20年は低い給料で働いていたのです。それが会社の業績が落ちて、世に無能な経営者が瀰漫するやいなや、退職金廃止、新給与体系という名の切り捨て、残業代のカット、責任だけはのしかかるなどの社会的”いじめ”た状態を受けているうえ、急増する支払いに追い付かなくなってきているのです。

会社が社員を締め出す。写真の最大の敵は会社の構造

時代がサラリーマンにとって逆風であるのは分かります。社が一丸となって、その困難に立ち向かう…。社員にはその覚悟はできています。ところが肝心の会社に立ち向かう能力は残っていません。むしろ足元をみて擦り寄る銀行の言うままに、社員整理をするために様々な理不尽な環境を押し付けてきます。私はそうした毒刃にかかった人たちを”蜥蜴(とかげ)の尻尾切り族”と呼んでいます。これはかつての”窓際族”などとは比較にならないほどの扱いを受けています。

ある方の一例ですが、彼は本当は尻尾の先(定年)まで勤めあげたいと考えています。ところが信頼すべき会社側が退職金をグレーな形で年々削り続けたり、給料の実質削減、現場での仕事を減らしたり、業務的にストレスをかけて居辛くさせるなどしています。以前、多くの企業で人事異動によって実質上の無仕事環境を押し付けたことが社会問題となったため、その後はかなり圧力のかけ方も巧妙になっており、尻尾の先に到達するまでに、その道を切り捨てなければならないように仕向けられています。これは業績の悪い企業によくあるやり方で、企業の再生などには目もくれず、ソフトランディングと称して、社員整理をすることを目的にしている場合が多いのです。

これらの企業のやり方は、違法ぎりぎりからむしろ違法ゾーンまでにわたっていますし、そのような企業はほとんどの場合、インサイダーなどの不正に手を染めているケースが大いのも傾向です。換言すれば、そのようなコンプライアンス(法令順守)ができなくなってしまっている企業だから、そのような手段に出ると言えます。現在の多くの定年退職者世代は、最近急に年金制度が変えられて、これまで60歳から手に入れられていた世代も65歳からに換えられていますので、少なくとも5年間は無給の時代が続きます。この間は再雇用といってもアルバイトくらいの給与しか配給されませんので、その間1500万くらいの出費が必要となってきますので、この十数年、お金のいる年代にボーナスや残業のカットをされてきた人たちはその出費どころか、定年までの生活費すら確保することができません。そして最も問題なのは、これらの責任は現場になく、お話しを伺っているとそのほとんどの場合、経営能力のない会社側にあるのです。

日本では90%の企業は不要であると言われることがありますが、これはある意味事実です。しかし、その不要な企業が賢明な企業の経営の舵取りなどできるはずもなく、そうした蜥蜴の尻尾切り世代が急増するのです。そんな現実を無視していて、働き方改革だの定年延長などと言っているのは別に悪い事ではありませんが、明らかな”被害者”がいるにも関わらず、日本の法が無策で有り続けていることに問題があると言ってよいでしょう。

官僚や現在の無能な経営陣にとっては、自分が定年退職すれば会社も社会もどうなろうと関係はないと考えています。だから可能な限り”尻尾族”を悪者に仕立て上げたいのですが、多くの方の話を伺い、また私が独自にリサーチしても、その責任のほとんどが企業側にあることは明白です。今後この世代は間違いなく急増します。そして長い年月真面目に働いてきても、企業の経営責任を容易に現場に押し付けられてしまうことが普通のことになってしまうと、企業消滅が現実のものとなってゆくのでしょう。”まやかし”というのは決して大袈裟な表現ではありません。この問題は必ず今後重要課題化されてきます。いつまでも誤魔化し続けられるものではありません。また、そのような風景を見ている若い人たちに、それはどのような影響を与えるものでしょうか。国会も何の役にも立たない”森友”とか”スキャンダル”などに感けておらず、将来の問題に向かってもらいたいものです。

-ビジネス通信
-,

© 2024 明日を読む