「接待」は、新しい時代の対外言語。

毎年10月になると下半期が始まる事や、展示会などの催事が増えることもあって接待が急増します。理由を聞くと皆、“予算”が関係すると口を揃えます。実際は特に接待の理由など考えたことが無い為、なんとなく思いついたのでしょうが、会社のヒエラルキーの最上階に近い人たちがこのような意識だから、日本のホワイトカラーは生産性が低いと言われる…と言うと、ちょっと辛辣だとは思いますが、これは私が常々感じてきたことに他なりません。
これについては以前のブログ「日本経済の全盛期の接待に痛感した、日本の企業文化の崩壊の亀裂」で少し触れましたが、企業の生産性と接待について、典型的な例をあげて検証したいと思います。

新たな生産性をあげるための接待のスタイルに変化が必要な日本社会の意識

例えば接待業務の依頼(私達はビジネス・パーサーと言っていますが)があると大体は急で、2~3日後だとか長くても週明けの月曜日などと言うのが多い傾向にあります。これでは準備不足なのです。また、相手についての情報、当然会社全般についてなど形式的なものは大体がホームページを見れば分かりますから、こちらが欲しいのは直の情報なですが、それに相手様の経歴や家族構成、趣味や近々のスケジュールに至るまで10伺っても1か2、返ってくれば良いほうで、中には“接待するのになぜそんな情報が必要か”と訝られることも少なくありません。まあこれなどは、こちらでカバーできるとしても、接待側の準備不足についてはどうしようもなく、この部分についてのレクチャーには一番手間がかかるのが本音です。畢竟、ほとんどの企業の接待の定義とは“高級なお店で、相手に飲み食いさせて、その時間を盛り上げること”、そして接待側は“自分を殺してでも、相手の機嫌をとって気に入ってもらう”こと、また“日頃行けない高級な店で幅を利かせる”などの人もいます。今では長期に亘るデフレの影響で接待も死語に近くなってきましたから、このあたりで日本の企業も生産性を上げる為の、また人を育てる為の接待の仕方を重視する方向に代わってもよいのではないかと思います。

“必要としないときに友情を結べ”の意味

日本では接待をする時期とは、まさに仕事が盛り上がって来る時期、特に春や秋に増えますが、それでは落ち着いて相互理解を深めることはできません。契約や商談に直接関わらない“必要としない”時期に、相手の意思決定者を仕事とは離れた形で御招きするのが接待の基本です。これですと相手もスケジュールも取りやすいですので、より深い関係創りが可能です。
できれば高級料理店や高級クラブなど、接待額に拘らないのが2点目です。相手と自分で20万の予算などと考えれば、単なる浪費に付き合わさせてるだけで、両者の関係の強化や相互理解には繋がりません。ここで充分時間をかけて招待する相手のことを知る努力が必要です。生い立ちや幼少の頃から初めて現在の生活環境や家族、嗜好や趣味についてまで調べた上で、相手の心の琴線に触れるような“企画”をたてるようにします。この過程を間違えなくできれば、相手にも強い印象となって残って来ます。


実は私は会社員をしていたころ、自分が接待をする可能性のある会社の会長、社長をはじめとする幹部の方については可能な限り写真付きでスクラップしていました。だいたい取引先の社員は当然ですが、相手側の会社の従業員も、自分の会社であっても会長や社長のことなどほとんど知らないのが普通です。滅多に接する機会がない中で、自分の素の部分を知っている者がいたらそれは強い印象となります。例えばその方の子供時代に過ごされた場所のお菓子などをお茶受けに出したり、仕事の話を全く持ち出さずに変に媚びる具合ではなく、嗜好や趣味の話ができるのも同じ効果があります。要するに接待とは“友達付き合い”ではなく、形を変えた“商談”、或いは“営業活動”ですし、その根幹は経営幹部の”究極の情報戦略であり対外交渉”でもあります。その意味では接待とは新たな時代の経営幹部の”対外言語”であると言えます。

企業の幹部になる資格が変わってくる“これからの時代”

多くの日本の企業では幹部は“身分”に過ぎません。日本の企業文化では、社員は会社という村社会に属しますから、例えエンジニアで就職しても、翌年に営業に回されたり、家族がいるのに単身赴任になったりします。それを決めるのは部課長などの役付きです。だから日本の企業では“予算と人事を握る立場の者が会社を制する”と言われていました。予算と人事。どちらをとっても企業業績や企業文化の貢献には何の役目のないものです。ましてや個人の能力や教養など不要です。おもしろいものでそんな人達が“出世”して、自分の権威を見せつける為に、人事や予算を武器にして部下を傷つけているのですから、生産性など上がる訳はありません。


そんな人間ほど、俺は接待する(される)身分なのだからと慢心していますので、自分の接待で、現場を少しでも助けようなどとは思いつきもしないでしょう。だいたい幹部が高額な給料をもらっているのも“身分”ではなく、身銭を切る為ですから、そもそも接待の多くは自腹でするのが本来のすがたでしょう。

海外企業では私的なパーティの場でしばしば商談が決まる

私がこうした接待についての考え方を学んだのは、かなり前のことですが、米国の企業の幹部の方に教えてもらったからです。彼の話で驚いたのは、彼が「企業と企業の関係は、“現実”と“現場”と“パーティ”の3つの舞台がある」と言い、「その内最も強固なのはパーティだ」と言っていたことでした。現実の突き合わせは当然ですし、現場通しの信頼も大切ですが、最終的にこの2つを動かし、問題が起こっても解決できるのは、幹部の信頼関係に他ならないと言います。その為、幹部は私的なパーティを開き、取引先の幹部を招き、数字も仕事も契約も関係のない、私的なお互いを確認し合う事で相互理解を深め、問題が現場で生じても幹部同士で調整し合うことで相互の利益をつくり解決を図るのだそうです。
その為、人を招くのはとても重要なことで、ホストは会場創りから相手側の情報把握、食事や飲み物の選定から話題の内容に至るまで、徹底的に精査するのだそうです。

日本型新時代接待で生産性を向上させよう

とは言っても、急に私的パーティをする環境はまだ日本にはありません。しかし相手を知り、相手の嗜好をおもんばかる場に招待をして、相互理解をすることで今後、長期に亘って両企業の関係構築を図ると言う意図ならば可能です。そうなると、これまでのような人事間隔では、間違ったヒエラルキーを積み上げるだけですので、スペインのメルセ祭りのカステルコのように、組織にダメージを与えながら落ちて潰れて行くことになるでしょう。


日本の接待文化の基盤となる地域の特色の多彩さや、食文化や多様性は先進国の比ではないという見方おあります。新世代型のものを構築して、それを仕事に活かして新時代を築いて行きたい。その思いで、私達は「ビジネスパーサー(接待屋)」を部門運営をしております。

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